おもしろ飼育コラム

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カピバラのアグアについて

  • 小野

みなさま、こんにちは。獣医の小野です。

気温が高くなり、暑い夏がやってきました。熱中症に気を付けてお過ごしください。

 

 

今回は、カピバラのアグアについてのお話です。

 

アグアは2016年に当館にやってきた7歳のカピバラです。

カピバラの平均寿命は8~10年といわれており、高齢のカピバラになります。

 

 

アグアは約1年前に糞便の状態が悪くなり、軟らかい便を排泄するようになったと同時に体重が少しずつ落ちてきました。消化管の病気を疑い、整腸剤や抗生物質を投与して治療を試みましたが状態が改善しなかったため、より詳しく検査を行いました。

 

その結果、炎症性腸疾患という病気であることがわかりました。

 

炎症性腸疾患という病気はあまり聞きなれないかもしれません。

この病気の明らかな原因は特定されていませんが、遺伝や免疫システムの異常などが考えられています。炎症性腸疾患は、腸粘膜に対して、自分の免疫細胞が攻撃してしまい、炎症を起こす病気です。

(じつは、アグアと兄弟のパンタやラーゴも炎症性腸症を起因とする形質細胞腫という腫瘍によって死亡しています。)

 

 

現在、アグアは免疫システムを抑える薬剤を投与して治療を行っています。

この薬剤の影響でからだの一部で脱毛が認められ、また小さな傷でも治りが遅く、悪化しやすい状態になっています。

しかし、治療を中止すると、腸粘膜の状態が悪化し、栄養や水分を腸から吸収できなくなり、衰弱してしまいます。

 

そのため、薬剤の影響を最小限にするよう薬剤の量をアグアの状態に合わせて調整したり、傷が治りやすいように軟膏を塗ったり、脱毛が広がらないようにブラッシングを行ったりして対応しています。

 

また、最近の研究で健康なカピバラの糞便を移植することで症状が改善したという報告があり、そちらについても取り組んでいます。

 

 

なぜ、病気のカピバラを展示しているのかという疑問があるかもしれません。

カピバラは自然界では平均10頭の小さい群れをつくって行動しています。この群れになわばりのようなものが存在して行動範囲がかぶらないようになっています。

 

当館ではアグア以外に兄弟のリオも飼育しています。

アグアとリオは兄弟ですが、治療のため、別々に飼育した後に再び同居させると、けんかになってしまいます。最悪の場合は、命に関わることもあります。

このため、アグアをバックヤードへ移動せずに、リオと顔を合わせられる距離で飼育を続けています。

 

これからも、飼育スタッフと協力して、アグアの病気が快復するよう、最善をつくしていきます。アグアのことを温かく見守っていただけると嬉しいです。

 

 

 

本日の開館時間

9:30-18:00

最終入館 17:00

世界淡水魚園水族館 アクア・トト ぎふ

〒501-6021 岐阜県各務原市川島笠田町1453

TEL 0586-89-8200 FAX 0586-89-8201

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