おもしろ飼育コラム

そっくりないきもの展 見どころその3
  • 企画展・特別展示

そっくりないきもの展 見どころその3

みなさまこんにちは。 企画展「そっくりないきもの」も、あっという間に開始からひと月がたちました。 過去の飼育コラムで紹介した見どころに続いて、今回は海でみられるそっくりないきものたちを紹介します。     まずは、こちらの写真をご覧ください。   水面近くで横たわっているのはマツダイという魚です。幼魚のうちは海の表層を漂う枯れ葉や、ホンダワラなどの流れ藻に紛れて生活しています。 行動が面白いのでぜひ紹介したい種でしたが、なかなか入手が出来ずに展示できないかも…となかばあきらめていたところ、伊勢シーパラダイスさまよりお借りすることができて展示することができました。 展示ではごはんの時間以外は横たわっているので、見るたびにちゃんと生きているのか不安になります。     あとは、石のようにじっと動かずに獲物を待ち伏せするオニダルマオコゼ、体の一部を使って小魚をおびきよせるイロカエルアンコウもいます。     海には毒を持つ危険な生き物にそっくりないきものもいます。現在は有毒のシマキンチャクフグにそっくりなノコギリハギと、毒のトゲを持つミナミゴンズイにそっくりなコンビクトブレニーを展示しています。   このミナミゴンズイにはなかなか苦戦しました。ゴンズイ玉と呼ばれる群れを作るくらいの全長5㎝ほどの個体を飼育していますが、以前飼育した先輩からは「とにかくごはんはしっかりあげること!!」と聞かされていました。他の魚たちよりも回数を多く給餌して対応していましたが、それでもやせる個体がでてきて「これはマズイ…」と回数をさらに増やし、他の魚たちのごはんとして使用している冷凍アユが卵を持っていた場合にはそれをあげたりして、なんとか展示を維持することができています。   そんなミナミゴンズイたちの展示も6月中に別の生き物に更新しようかと考えています。コンビクトブレニーがミナミゴンズイに似ているのは幼魚の間だけで、成長して模様が変化してきたので、そろそろ選手交代です。どんな魚か気になる方はお早めにお越しくださいね。

あの有名なカエルが…!?
  • 日本の両生類

あの有名なカエルが…!?

みなさまこんにちは。展示飼育部の山下です。 今は2025年5月です。2025!?時が進むのが早すぎます。体感2024年の5月です。入社してはや1年が経過したのですね…。     さて気を取り直して2025年5月。暖かな日が増え、雨が降るとカエルの鳴く声が聞こえてくる季節になりました。みなさま、カエルについては昨年12月にとあるトピックがあったのをご存じでしょうか。実はみなさんもよくご存じの生き物が2種類に分けられたので、ご紹介しようと思います。その生き物とはこちら! Dryophytes japonicus ニホンアマガエルです!     これまで、日本全国に広くニホンアマガエルが分布するとされていましたが、実はニホンアマガエルという種類は遺伝的に異なる2集団に分けられる、ということがわかっていました。 そして先日、愛知教育大と京都大学の研究グループにより、ニホンアマガエルとは異なる集団がDryophytes leopardus 新標準和名ヒガシニホンアマガエルとして新種記載されました。     ニホンアマガエルは近畿地方の辺りを境にして、日本の南西部と韓国などに分布し、ヒガシニホンアマガエルは日本の北東部とサハリンなどに分布するそうです。岐阜の個体はニホンアマガエルではなく、ヒガシニホンアマガエルの集団に含まれることになります。当館の種名板も今回の記載を受けて更新しました。   「なんで岐阜が含まれる集団の名前が変わったんだ!岐阜が含まれる集団はニホンアマガエルのままで、南西の集団をニシニホンアマガエルにしたらいいじゃないか!そうしたらわざわざ水族館の種名板を更新しなくてもいいじゃないか!」と思う方もいらっしゃるかもしれません。ところがそうもいかないんです。     新種を記載する際には、その生物のここがほかの生物と違うんですよ、という特徴を保証するためのタイプ標本というものを指定する必要があります。ニホンアマガエルという種類を記載する際に指定されていた標本の特徴は、南西の集団でよく見られる特徴と合致することがわかりました。 そのため、真のDryophytes japonicus ニホンアマガエルはおそらく南西の集団のことであり、北東の集団に新しく学名を付ける必要がある、ということになりました。 そのため、北東の集団にDryophytes leopardus ヒガシニホンアマガエルという名前が付けられたのです。このあたりの話はけっこう複雑ですので詳細は省きますが、気になる方はぜひご自分で調べてみてください。     「じゃあその特徴ってのはなんなんだ!」という方もいらっしゃると思うので、これからご紹介します。 どうやらヒガシニホンアマガエルは太ももの裏側にヒョウ柄模様が見られる場合が多いようです。当館で展示している個体を確認してみると… 確かに、白と黒のまだら模様がなんとなくヒョウ柄のように見えます。 ヒガシニホンアマガエルではこのヒョウ柄模様が見られる場合が多いため、ヒョウを意味するleopardus という種小名が付けられました。 ニホンアマガエルではあまりまだら模様にならず、一様な模様になることが多いようです。 ただ、この特徴だけで完璧に2種を区別することは難しく、中にはヒョウ柄模様のあるニホンアマガエルがみられる可能性があるそうなので、注意が必要です。 ぜひみなさんも、家の近所のアマガエルを見てみてください。めちゃくちゃヒョウみたいな模様してる!みたいな発見があるかもしれません。     今回のコラムはいかがでしたでしょうか。なんとなくニホンアマガエルがどうなったのか、理解していただけましたでしょうか。私はこのコラムを書いてみて、簡単に説明することの難しさを痛感しております。 ヒガシニホンアマガエルの記載論文は、調べたら誰でも読むことができます。気になる方は読んでみてください。このコラムでは記載論文のほんの一部しか紹介できておりません…。   それではまた次のコラムでお会いしましょう!

魚病闘病日記パート⑦(ファイヤースパイニィイールの寄生虫)
  • 治療

魚病闘病日記パート⑦(ファイヤースパイニィイールの寄生虫)

みなさん、こんにちは。 少しずつ暑くなってきました。気温の変化にご注意くださいね。   魚病闘病日記、久々の更新です。 約1年ぶり、ちなみに前回はプロトプテルス・ドロイの治療についてのお話でした。     さて、今回は水族館で飼育している魚から見つかった寄生虫についてのお話です。   さかのぼること、なんと5年前! 2020年に搬入したファイヤースパイニィイール5匹がなかなかエサを食べず、体調の悪い状態が続きました。     ↓ファイヤースパイニィイールはこちら 実は、メコンオオナマズがいる水槽で展示している魚でトゲウナギと呼ばれる魚の仲間です。     1匹のファイヤースパイニィイールが残念ながら死亡してしまい、死因を調べるために剖検(※1)を行いました。   腹腔内や腸管内に寄生虫がたくさん認められました。その他の臓器についても病理検査に出してみましたが、寄生虫感染以外に目立った病変はありませんでした。   ※1 剖検とは 生き物が死んだ原因などを検査するために、死亡した生き物を解剖すること。     (閲覧注意:魚の内臓の写真があります。) ↓剖検様子はこちら、黄色丸のところに赤色の寄生虫がいることがわかります   寄生虫が体調不良の原因ではないかと考え、駆虫剤の薬浴を開始しました。 しかし、残り4匹の状態は良くならず、エサも食べないままです。 さらに1匹の死亡が認められてしまいました。   その個体も剖検しましたが、1匹目と同様に、寄生虫の感染以外に病変が認められません。 薬浴では駆虫できないと思い、駆虫剤を経口で与えることにしました。   すると、数日後に1匹がエサを食べ始めました。また、2週間後にもう1匹食べ始め、投薬を始めて2ヶ月後には最後の1匹も摂餌を確認することができました。 なんとか、残った3匹は体調が回復し、順調に成長していきました。     しかし、ここで問題が1つ。 ファイヤースパイニィイールから完全に寄生虫を排除できたかはわかりません。 そのため、他の魚と同居させてしまうと飼育水を介して寄生虫が移ってしまう可能性があります。   そこで、寄生虫を調べるため、岐阜大学獣医寄生虫病学研究室の高島先生に寄生虫の同定を依頼しました。   高島先生に、今まで調べられて知られている寄生虫の形の特徴と比較して、どの種や属に属するのかを調べてもらうこととなりました。 さらに同研究室の齋藤先生も加わり、同定してもらった結果、カマラヌス属の線虫であることがわかりました。     残念ながらカマラヌス属の生活環(※2)はまだわかっておらず、ファイヤースパイニィイールは他の魚と同居することができませんでした。 展示水槽へのデビューは叶いませんでしたが、現在もバックヤードの水槽で飼育管理を行っています。   ※2 生活環とは 寄生虫の卵や幼虫が発育、変態して成虫となり、次の世代を生じるまでのサイクルのこと。寄生虫によっては、成熟するために他の生き物(中間宿主)に一度、寄生しないといけないものもいる。     また、今回見つかった寄生虫がカマラヌス属の特徴をもつことまでは判明しましたが、報告されている文献と比較しても形が全く同じものが見つからず、もしかして新種?!という状況になりました。   そこで、高島先生と齋藤先生は世界中からカマラヌス属に関する文献を取り寄せ、今回検出された寄生虫と比較されたそうです。 文献は膨大な量になっていましたが、資料をまとめた先生方は「この資料でカマラヌス属全て同定できるようになりました」と満足げな顔をされていました。   今回は、メスの寄生虫しか検出されなかったことより、新種であることを確定させることはできませんでしたが、寄生虫の形態とDNA情報だけではなく、寄生された魚の症状についてもまとめた貴重なデータを発表することができたとのことです。     これらの結果が、2025年3月に寄生虫の雑誌である『The Journal of Parasitology』に論文掲載されました。キレイな寄生虫の写真が載っていますのでぜひご覧ください。   https://bioone.org/journals/journal-of-parasitology/volume-111/issue-2/24-58/Molecular-Characterization-and-Morphological-Observation-of-Zeylanema-Nematodes-in-the/10.1645/24-58.short     水族館にやってくる生き物は、さまざまな場所からやってきます。 そのときに病気にかかっている可能性もあり、検疫することの大事さを痛感した事例でした。 今後も、水族館の生き物を健康に管理できるよう頑張っていきます!     ↓最後におまけ テーマ水槽『うなぎのぼりの恵方巻』でも活躍してくれました

そっくりないきもの展 見どころその2
  • 企画展・特別展示

そっくりないきもの展 見どころその2

みなさまこんにちは。 GW期間中はたいへん多くのお客様にご来館いただき、館内はもちろん企画展会場もとてもにぎわっていました。 連休中は忙しかったですが、企画展担当としては嬉しい気持ちで作業をしていました。     前回の飼育コラムでは企画展会場に入ってすぐの生き物を紹介しましたね。     今回は、出口に近いこちらのエリアの見どころをお話しします。   まずは大きな展示窓をのぞいてみましょう。中には江戸川区自然動物園さまからお借りしているアナホリフクロウがいます。   写真を撮ろうとしたタイミングで驚かしてしまったのか、いつもいる場所から下に降りてしまいました。   いつもはこんな感じです。   なにやら赤いにょきっとしたものの上にとまっていますね。これはアリ塚をイメージして作ったレイアウトなのですが、実際に南米で当館スタッフが見た光景から着想を得たものです。     アナホリフクロウは南北アメリカ大陸に広く分布している種ですが、野生の個体を実際に見たことが無いので、これはとても参考になりました。     擬態の企画展を計画しているときにどうしても展示したかった生き物のひとつがこのアナホリフクロウでした。わかりやすい擬態は葉っぱや石や危険ないきものなどに似ていることだと思いますが、アナホリフクロウの場合は「音」を使った擬態になります。   アナホリフクロウは危険を感じると、猛毒を持つガラガラヘビの威嚇音に似た鳴き声を出すことが知られています。今回はガラガラヘビとアナホリフクロウの出す音も聞くことができますので、見るだけでなく聞くそっくりもお楽しみください。     その他にも、においで擬態するこんな生き物たちも展示しています。     そっくりないきもの展では関連イベントとして、6月15日に様々な生き物の声を真似る「動物ものまね芸」でおなじみの五代目江戸家猫八さんに来ていただけることになりました。 こちらも企画展担当としてぜひ実現したかったものになります。 子供のころにテレビで見て面白いなぁ~と思った動物の鳴きまねをする落語家さん。いまでは五代目へとその技術が引き継がれています。   事前予約にはなりますが、子供たちに楽しんでもらいたいと思い、保護者と一緒に参加の中学生以下は参加費を無料にしています。 参加者には千社札のプレゼントと、あわせて手ぬぐい・サインの抽選会も開催します! みなさまのご参加をお待ちしています。   <詳しくはこちら>江戸家猫八講演会『本物そっくり?!なきまねライブ・みんなも一緒に鳴いてみよう』

企画展『そっくりないきもの』はじまりました!
  • 企画展・特別展示

企画展『そっくりないきもの』はじまりました!

みなさまこんにちは。 4月19日に企画展『そっくりないきもの~似ているのはどうして~?』が開始となりました。 この展示は擬態をテーマにして、木や石、葉っぱなど自然界にありふれているものや、毒を持っているなど危険だったり美味しくなかったりするものに見た目が似ている生き物を中心に、見た目以外でも鳴き声やにおいなど、なにかにそっくりな生き物たちを紹介しています。 7月13日までの開催期間中に、担当から見どころをお伝えできればと思います。     第一回目は、企画展入口に近い2つの水槽で見られる生き物です。 この写真に葉っぱにそっくりなリーフフィッシュが写っています。どこにいるかわかりますか?   ここにいます!   この中だけでもリーフフィッシュが5匹いました。枝の向こうにいたり、ピントがボケていたりするのもあって難しかったですね。それにしても葉っぱにそっくりです。 リーフフィッシュが水槽には10匹いるはずなのですが、全部見つけられたら…スゴイです!       少し先に進むと、大きな窓があります。どこに生き物がいるかわかりますか?   木の枝が曲がったところに鳥がいました!   オーストラリアガマグチヨタカは樹皮によく似た羽の模様で景色に溶け込んでいます。危険を感じると体を細めて、まるで木の枝のような姿にもなります。 搬入した当初はこのような感じでした。       でも最近は環境に慣れてきたのか、ぜんぜん細くなりません笑     擬態とは何かに似ていることで自然界を生き抜いてきた生き物が持つ特徴です。まだまだ紹介できていない“そっくりないきもの”たちもたくさん展示していますので、ぜひ遊びに来てくださいね。

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本日の開館時間

9:30-18:00

最終入館 17:00

世界淡水魚園水族館 アクア・トト ぎふ

〒501-6021 岐阜県各務原市川島笠田町1453

TEL 0586-89-8200 FAX 0586-89-8201

2回分の料金で何度でも楽しめる!

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