- 企画展・特別展示
沢にいるカニの沼
- 中野
みなさま、こんにちは。
登山や沢遊びに出かけたとき、石をひっくり返してカニを探した思い出はありませんか?そんな時に見つけて嬉しかったカニといえば、お馴染みの「サワガニ」ですよね。
実は、そんな身近なサワガニに、近年驚くべき発見が報告されているのをご存知でしょうか。
開催中の企画展『カニカーニバル』では、このサワガニは絶対に紹介したいという思いがありました。全国のサワガニを集めるのは簡単ではありませんでしたが、さまざまな方のご協力をいただき、無事に展示することができました。ご協力いただいた皆様には、大変感謝しております。
さて、サワガニが辿ってきた歴史はとても複雑なようで、ここで語り尽くすことは難しいのですが、その魅力の一部を少しだけご紹介します!

サワガニは他のカニと異なり、一生を川などの淡水で過ごし、海へは下りません。つまり海を渡れないため、広域に移動する手段を持たないはずですが、日本全国に広く分布しています。この事実こそが、サワガニの不思議なのかもしれません。
海を渡れないサワガニが分布を広げられたのは、かつて陸地が繋がっていたからです。つまり、サワガニのルーツや遺伝子の繋がりをたどることは、日本列島がどのように繋がり、そして分かれていったのかという地理の歴史を解くことにも繋がるのです!
とてもロマンのあるお話ですよね。

また、サワガニには茶色だけでなく、青色や赤色の個体がいることが知られています。

しかし、見た目の体色が似ていても、遺伝子を調べてみると昔から別の集団に分かれていた、なんてこともあるそうです。体色の違いは、その地域の環境に合わせている可能性もありますが、まだ明確なことは分かっていません。
私が個人的に一番不思議だなと思うのが、「青い個体のsKK集団」と呼ばれるサワガニです。

実は、青い個体は黒潮が流れる比較的暖かい太平洋側に多く分布しているようで、九州南部だけでなく、遠く離れた伊豆半島や房総半島にも飛び地のようにすんでいます。
一生を川で過ごすはずのサワガニが、一体どうやってそんな長距離を移動したのか。もしかしたら、黒潮の流れに乗って海を渡るという移動をしたのではないか?それとも、過去に広く分布していた大きな集団の一部が、それぞれの場所で生き残っただけなのか?研究論文でもこのような考察はされていますが、こちらもまだ明確なことは分かっていません。

展示中、ある集団のサワガニが水槽の壁を登っている姿をよく目にして不思議に思いましたが、最新の研究では、サワガニは思っている以上に移動能力が高く、成長すると水中だけでなく陸上も歩き回ることが分かっています。今回の企画展を通してさまざまなカニについて学ぶ中で、カニは私の想像以上に驚きの能力を持っていることに気付かされました。
身近な生き物の中にも、まだまだ知らない不思議が隠されていますので、ぜひ目を向けていただけると嬉しいです。
ちなみに、そんなサワガニの魅力にハマってしまったのか、サワガニのマニアックなガチャガチャを回して、全集団をコンプリートしようとしている当館の飼育スタッフが何人かいました(笑)
