生きた化石カブトガニ
2017.02.11 (土)
企画展「話題になった生きものたち」で展示中の生きもので、
今回紹介するのはカブトガニTachypleus tridentatus。
分類学的にヒトから遠く離れた生物ほどおもしろいと感じる私、
先日ブログで紹介したアルテミアに続いて、
今回のカブトガニも非常に楽しみにしていた生物です。
カブトガニは日本国内では、
瀬戸内地方や九州北部の沿岸に広く生息しており、
このうち岡山県笠原市や佐賀県伊万里市の繁殖地は
国の天然記念物に指定されています。
ただし多くの生息地で開発により生息環境が悪化し
個体数もかなり減ってしまっています。
そのため環境省のレッドデータブックでは
絶滅危惧Ⅰ類に指定されているのが現状です。
そんなこともあり、一体どんな環境で生息し繁殖しているのか、
以前から一度生息地を訪れてみたいと思っていた生物なのです。
カブトガニがなぜ話題になったのか調べてみると、
特徴的な硬い甲羅と長い尾からなる姿かたちが
大昔からほとんど姿を変えておらず「生きた化石」と呼ばれており、
1970年代の生きた化石ブームに乗っかったそうです。
名前に「カニ」とは付くものの、
分類においてはカニよりもクモに近縁な生物であり、
古生代に栄えたと言われる三葉虫が祖先にあたるそうです。
たしかに似ているなぁと思って眺めています。
今回はオスとメスの2個体を飼育しています。
しかし、企画展開始時には上の写真のように
1個体のみの展示となっていました。
なぜなら、オスが環境に慣れないのかエサを食べなかったので、
慣れるまでの約2ヶ月間バックヤードで飼育していたのです。
そして企画展開始から遅れること1ヶ月半、
1月24日にやっとオスメス2個体での展示となりました。
ということで、オスとメスで外見がどう異なるのか、
写真で説明していきます。
まずは背面の全体像。
どうでしょうか?? ほとんど同じに見えますが、オスは甲羅の頭部辺縁がへこんでいますね。 正面からだとなおさらわかりやすいですよ。 オス吻側 そして、さらに分かりやすいのがこちら。 腹部の写真。 オス腹面 メス腹面 ポイントはオスの写真の緑色矢印!! オスの第2、3番目の脚がかぎ状なんです!! 他の脚はメスのものも含めて全てはさみ状ですよね。 抱合の際、オスがメスの上に乗るのですが、 この時メスの甲羅が当たる箇所のオスの甲羅がへこみ、 メスの甲羅をつかみやすいように オスの第2、3番目の脚がかぎ状になっているのです。 ただ、性別判定のポイントがわかっても だいたいの時間はこんな状態。。。 なかなか動いている姿を目にできませんが、 それでも時々アクリルガラスにもたれかかって ワサワサと動いていることがあります。 そんなラッキー!!な場面に遭遇したら、腹部をよく観察してみてくださいね。 メスの写真の紫色矢印のところが口になります。 エサを食べている様子も撮影したいのですが、 なんせエサに覆いかぶさってしまうので、撮影できず、、、 ちなみにこの写真を撮るために 昨年末に入社した新人に協力してもらいました。新人の手が写っていますね。 そのうちこの飼育日誌にも登場すると思いますので、 楽しみにしていてくださいね。