タガメの成長記録
2020.08.20 (木)
前回は水生昆虫の卵についてブログを書きましたが、今回はその中のタガメの成長について書いてみたいと思います。
タガメは、種の保存法に基づく特定第二種国内希少野生動植物種に指定されており、2020年2月10日から販売・頒布目的の捕獲や譲渡は禁止されています。
さて当館では、今年の6月7日にタガメの産卵を確認しました。オスが卵を保護していたのですが、一部の卵には水の補給がないようで、十分に成長していないようでした。
(卵の大きさにばらつきが見られます。)
本来だとオスが卵を乾燥しないように世話をしますが、うまくできていないようなので、下の写真のようにペットボトルを加工して、卵が産み付けてある木の杭を湿らせるようにして卵の成長の様子を見ました。
6月16日に20個体の幼虫が産まれてきました。産卵数の1/4程度のふ化率でした。
成長の悪い小さかった卵は残念ながらふ化しませんでした。
生まれたばかりの1令幼虫は体に黒の縞々があるのが特徴です。
下の写真は1令幼虫がオタマジャクシを食べている様子ですが、暴れる獲物に体を麻痺させる成分の含まれた消化液を注入して、ゆっくり時間をかけて獲物の肉質などを溶かして食べていきます。
6月21日には1回目の脱皮をして2令幼虫になりました。2令幼虫からは体が緑色になります。水草など植物に紛れて目の前を通る獲物をじっと待ちます。
続いて6月28日に3令幼虫、7月6日に4令幼虫、7月15日に5令幼虫に脱皮しました。
5令幼虫は最後の脱皮前には体色が赤銅色になり羽化の準備ができたことがわかります。
最終的には8月1日に無事に成虫になりました。
タガメは成長に伴って脱皮をして、約1.5倍ずつ大きくなります。
タガメは5回の脱皮を繰り返して成虫になりますが、その脱皮殻を並べてみるとタガメの成長の具合がわかりやすいかと思います。
これまでもタガメの繁殖には取り組んできましたが、かなり手間がかかることや、上手くいかない年もあったりしました。
そこで今年から水質の悪化を防げるように飼育設備を改良しました。また、幼虫が餌を捕まえやすいように水位を低くしたり、脱皮の足場となる水草や流木などを多めに入れたこと、共食いを避けるため適切なタイミングで個別飼育に変更したことなど、こつこつ工夫したことが功を奏して、大成功でした。