DLT
2022.11.03 (木)
初めまして、4月に入社した霜鳥です。
早いもので入社から半年以上が経ち、すっかり肌寒い季節になりました。
さて、いきなりクイズですが、11月1日は何の日でしょう?
正解は、「計量記念日」です!
1993年の11月1日に、現行の計量法という法律が施行されたことから、経済産業省によって定められているそうです。
今日は水族館での「計量」のお話をお届けします。
今回のお話の主役となる生き物は、当館でもその大きさで圧倒的存在感を放つメコンオオナマズ!
そのメコンオオナマズの全長(吻端から尾びれ先端までの長さ)測定について、ご紹介します。
どのような方法で測定しているかというと、DLT(Direct Linear Transformation)法という、ちょっと特殊な方法です。
2台のカメラを使ってメコンオオナマズを撮影し、その映像から、3次元座標におけるメコンオオナマズの吻端と尾びれの先端の位置を推定し、その距離を求めます。
う~ん、なんだか専門的で難しそうですね…。
そんなことしなくても、直接メジャーでも使って測ればいいじゃないか!と言われてしまいそうですが、実はそれ、水族館ではかなり難しいお話。
多くの魚は臆病で、人や見慣れないものが近づくと逃げます。
また、無理やり捕まえると驚いて暴れてしまうことがあります。
あの大きなメコンオオナマズが大暴れすると…、想像しただけで恐ろしいですね。
麻酔などを使う方法もリスクがあり、魚への負担を減らすためには避けたいところです。
DLT法を使うことで魚に直接触らずに済むので、生きている魚にとって優しい測定が可能になるのです。
当館では2016年にも同じ方法で計測を行い、当時一番大きい個体が169.2 cmでした。
果たして6年間でどれだけ成長したのでしょうか。
測定した日は2022年8月31日。
近畿大学農学部水産学科漁業生産システム研究室の皆さまに教わりながら、今回私も撮影と解析に挑戦してみました。
こちらが実際の撮影風景です。
2台のカメラを設置し、撮影スタート!(当館のカメラと近畿大学のカメラがあるので4台になっています。)
まずは3次元座標の基準となる一辺90 cmのキャリブレーションフレームを水槽内に沈めます。
ちなみに潜水しているのは当館の館長です。
キャリブレーションフレームの基準点(角にあるオレンジの丸)がすべてカメラに映るようにしたら引き揚げます。
あとはそのまま水槽内のメコンオオナマズを撮影するのみ。
あとから見返した際に分かりやすいよう、横切った個体の識別番号を示していきます。
撮影は終了し、ここからが解析。
苦手なパソコン作業です…。
まずはキャリブレーションフレームの画像を左右それぞれのカメラ映像から抜き出し、各基準点同士の実際の長さをあてはめ、補正を行います。
解析の精度を高めるために誤差をなるべく小さくするのですが、これがなかなか難しくて時間のかかる作業で、私は3時間ほど苦戦しました…。
この作業が済んだら、これを基準にメコンオオナマズの画像解析が出来るようになります。
メコンオオナマズが体をまっすぐにして泳いでいる瞬間を探し、1秒間の映像を30枚の画像に分けて抜き出します。
そして各画像の吻端と尾鰭の先端を指定していくと…。
出ました!結果は340 cm!!
…いやいや。そんなはずはない。いくら何でも成長しすぎだし、最大で3 m程度と言われているメコンオオナマズのそんなギネス級の記録……。
落ち着いて見返してみると、左右のカメラから抜き出した画像を解析ソフトに入れるときに、左と右を逆にして取り込んでいたようです。
まさかのヒューマンエラー。
今後カメラの左右は絶対に間違えないように、本体に「左」「右」を明記しておこう。と先輩と固く誓ったのでした。
そんなトラブルも乗り越えつつ、現在解析を進めています。
飼育作業の合間をぬっての慣れない作業ですので時間がかかっておりますが、詳しい結果が出たら皆さまにお伝えしたいと思います。
皆さまは当館のメコンオオナマズ、どれくらいの大きさがあると思いますか?
ぜひ直接ご覧いただき、想像していただけたら嬉しいです。