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おもしろ飼育コラム一覧
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「うわな漁」と「うわな料理」

2023.12.06 (水)

波多野

皆さまこんにちは。

今日は「うわな漁」「うわな料理」についてご紹介したいと思います。今回のお話の主人公はウグイになります。ウグイは日本各地に生息している川魚で、普通に見られる魚の一つでもあります。

 

普通と書きましたが、いやいやどうして、川と海を行き来することや強酸性の川や湖でも生息することができ、その生態は生命力にあふれ、とても魅力的な魚でもあるのです。

ちなみに産卵期では写真のように鮮やかな婚姻色も現れます。

 

一般に市場に流通することは少なく、私自身も大人になるまで食べたことはありませんでした。一部地域では今でも食文化として残っており、冬のウグイは寒ウグイとして脂ものり大変美味しくなるとのことです。

今回、「岐阜の川人文化研究会」の長尾代表よりお声がけいただき、岐阜県郡上市に伝わる寒ウグイ漁具の展示とうわな料理の試食会にご招待いただきました。

 

郡上市を流れる吉田川でも、昭和50~60年代ごろまでは寒ウグイ漁が行われ、家庭でも食されていたそうです。

こちらがその「うわな漁」で使用されていた漁具になります。

 

ウグイの需要も漁獲量も減り、うわな漁は昭和60年頃に行われなくなったそうですが、その唯一の経験者が「大多釣具店」店主の清水さんで、当日は清水さんより貴重なお話を沢山聞くことが出来ました。

ウグイは、水温が下がると石の下などに潜り越冬する習性があり、その習性を利用して魚が入る穴「魚穴(うおあな)」をつくるのがこの漁の特徴なのです。「うおあな」から語変化して「うわな」と呼ばれているそうです。会場となったギャラリーの店主からも、行商で売りにきたウグイを食べていたとお話を聞き、地元の方にはウグイは一般的な魚だったようです。

そして、お待ちかねの「うわな料理」。鮎も見えますが、メインはウグイです!当日は、博物館の学芸員の方や魚を研究する学生さん、漁協の方など15名が参加されていました。

 

こちらは、吉田川で獲られたウグイの甘露煮になります。川魚の臭みや癖もなくとても美味しくておどろきました。もともと小骨が多い魚で、中骨が少し硬い印象もありましたが私は気にならず、頭から尾までバリバリと全て頂きました。

 

こちらは、山形県で養殖されたウグイを取り寄せ、唐揚げにしたもので、軽い味わいでこれは子供たちも大好きな味と食感だと思います。

 

こちらは、ウグイの骨や頭で出しをとった炊き込みご飯で、一番ウグイの味を感じ取れる料理でもありました。

 

一般的には、食されることの少ないウグイですが、旬や料理法によって、とても美味しくいただけることが良く分かりました。山間部では貴重なタンパク源であり、人々の生活を支えていた魚でもあるのです。

 

ここまでウグイの魅力は伝わったでしょうか。実は岐阜の飛騨に、ウグイの魅力度向上を目指す「日本ウグイ協会 https://ugui.info/ 」が設立されていることも知りました。

今回の参加者に協会の会長も参加されており、お話をさせていただきましたが、会長がお若い!若者たちがウグイの魅力を伝えるって嬉しいなと思いました。

色々な方々の思いが詰まった、とても素敵な会に参加させていただき、この場をお借りして御礼申し上げます。

岐阜県では一度途絶えた、「うわな漁」と「うわな料理」。伝統的と新たな可能性も融合した、ウグイの魅力を水族館でもお伝えしていきたいと考えています。

本当に美味しく、為になる一日でした。

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カテゴリー  日本の淡水魚
キーワード 波多野
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