魚類闘病日記パート⑥
2024.02.11 (日)
みなさま、こんにちは。
今回はプロトプテルス・ドロイの治療についてです。
こちらの魚は2階の「コンゴ川 下流の魚」水槽で展示されています。
先月、予備水槽で飼育しているプロトプテルス・ドロイにある異変が確認されました。
お分かりいただけるでしょうか?
からだの一部が浮き上がってしまっている状態になっています。
実は、こちらのプロトプテルス・ドロイはハイギョの仲間になります。
ハイギョは私たちと同じように、直接空気を肺に取りこんで呼吸を行います。
そのため、水面まで浮上して空気を吸う必要があります。
少しでも呼吸がしやすいよう、水槽の水位をさげました。
過去にハイギョの仲間がこのような状態になったことをみたことがあるスタッフ曰く、
水位をさげて管理しても、体が浮き上がることが治らないと死んでしまうとのこと。
何かできないだろうかと、まずは浮き上がっている原因を調べることにしました。
おそらく浮き上がっている部分に空気が入っているだろうと、
プロトプテルス・ドロイを保定して注射針を刺してみました。
すると、予想通り少し空気が抜け、下の写真のように浮きあがることがなくなりました!
しかし、数分後には元の状態に戻ってしまったことから、おそらくお腹の中になんらかの異常があるのではないかと考えられました。
空気(ガス)が貯まりそうな場所は、肺や消化管が考えられます。
ハイギョの肺や消化管の病気について調べても、ほとんど情報がなく、行き詰ってしまいました…。
そこで、ハイギョ以外の魚において浮き上がってしまう病気について調べると
鰾(うきぶくろ)の異常で同じような症状を確認することができました。
鰾の異常では、細菌や真菌、寄生虫感染が関与していると言われています。
原因を特定するためには麻酔下で肺や消化管を直接、確認する必要があり、その方法ではプロトプテルス・ドロイに負担がかかり過ぎてしまいます。
そのため、診断的治療として毎日、抗生物質の筋肉注射を行い、経過をみてみることにしました。
治療を始めてから4日目の朝、プロトプテルス・ドロイの様子を見に行くと、すっぽりと隠れ家である塩ビ管の中に入ってこちらを見ていました。
おっ!これは良くなってきたのではないかと思い、一旦、治療を中断し、摂餌欲が回復するかを観察していくことにしました。
その数日後、問題なく餌も食べるようになり、再発する様子もなく治療終了することができ、一安心!
現在も、浮き上がることなく、元気に予備水槽で過ごしています。
しかし、浮き上がってしまった原因が、肺にあったのか、消化管にあったのかは未解決のままです。
魚類の病気や治療法については、まだまだわかっていないことも多いため、このように治療に対しての経過をみて判断することもあります。
こうしたデータを蓄積して、よりよい治療をできるように努め、今後もしっかりと健康管理していきたいと思います!
(閲覧注意:魚の内臓の写真があります。)
ちなみにですが、ハイギョの仲間であるプロトプテルス・エチオピクスが死亡したときに剖検したときの写真がこちらになります。
肺も消化管もお腹の中に長く分布しており、浮き上がっている部分が尾側でしたが、どちらの可能性も否定することができませんでした。