メコンオオナマズにそっくりな魚!
2024.04.24 (水)
みなさまこんにちは。
今回初めて記事を書かせていただく展示飼育部の佐藤です。
どうぞよろしくお願いいたします。
さて、今回紹介する生き物はカイヤンという魚ですが、 どこの水槽に展示しているかご存じでしょうか?
カイヤンは2階の「メコン川中流の魚」水槽(メコンオオナマズのいる水槽のとなり)にいます。
あまり注目されていない魚なのではないかなと思っていたので、私の初コラムはこの魚から紹介してみようと思います。
このカイヤン!よく見ると、大人気のメコンオオナマズによく似ています。
それもそのはず、水槽の上にある種名板を見ていただくとわかると思いますが、
同じパンガシアノドンというグループ(同じ属)の魚なのです。
でも、同じグループとはいっても違う種類の魚なのでうきぶくろの形や歯の形などが違います。
そんなカイヤンですが、メコンに暮らす現地の人たちにとってはどんな存在の魚なのでしょうか? では、現地の「食文化」について、ほんの少しご紹介していきます。
上の写真は市場の鮮魚コーナーの様子です。カイヤンがたくさん売られています。
日本で暮らす私たちの場合、動物性たんぱく質といえば牛肉、豚肉、鶏肉、海の魚などから摂取することができます。しかし、インドシナ半島の内陸部を流れるメコン川流域の農村地域はまだまだ近代的な暮らしとはいえず、現地の川や湖で採れる淡水魚なども重要な食料となっています。
ある報告によると、メコン川流域の人たちは動物性たんぱく質の約70%を淡水魚から摂取しているとのことで、淡水魚がとても重要な食べ物ということが分かります。
さらに、現地の人たちが食べる淡水魚の中でベスト5に入る魚がこのカイヤンなんです!
ここで自己紹介を兼ねて少し私の話を!
私はメコン川が流れるカンボジア王国に12年住んで魚のフィールド調査研究をしていた経験があり、今年で足掛け25年カンボジアの魚たちを追いかけています。
カンボジアでの魚調査では水辺での魚採りだけではなく、地方の漁村や市場を訪問して、そこで採れる魚たちを記録します。そうすると、漁師さんの家でも、市場の魚売り場でもかなりの確率でこのカイヤンを目にしました。
そんな訳でこれまで私は何度もカンボジア料理としてカイヤンを食べる機会があったのですが、その味は大きく二つのタイプ(美味しいカイヤンと美味しくないカイヤン)に分かれるということが実体験でわかってきました。
美味しいカイヤンは泥臭さや余分な脂肪分がないメコン川の天然カイヤン、臭みがあって脂肪分が多くて主に池で養殖されたのが美味しくないカイヤンです。(あくまでも私個人の意見です)
カイヤンは炭火焼きか香草の効いたサワースープなどで食べることが多いのですが、15年ほど前に漁村を訪問したときのこと、特に脂がのった養殖カイヤンを村の方々にすすめられるまま食べたところ、胃もたれしてしまいました。
それ以来、その時の匂いと味を覚えた私はカイヤンを食べるのが苦手になってしまい、料理で出されても私の右手の箸はカイヤン料理をつまむことはなくなってしまいました。
↑カイヤンのタマリンド風スープ
ここまで書いてしまうと、カイヤンは美味しくないのか?と思われてしまいそうですが、メコン川で採れたカイヤンはメコン川の流れの中でしっかり育っただけあって淡白な味でとっても美味しい魚です。
最近では日本のスーパーの鮮魚コーナーでパンガシウスと書かれた白身の切り身が売られていると聞いています。この切り身は今回紹介したカイヤンやその仲間のパンガシウス属の魚たちだと思いますので、見かけた際にはぜひ一度ご賞味し
てみてはいかがでしょうか?
カイヤンは当館の水槽ではあまり目立つ存在ではないかもしれませんが、メコンオオナマズに最も近縁な魚で、現地ではとても大切なたんぱく源として人々を支えている魚です。
この記事を読んでいただいた方の中にカイヤンを覚えてくださる方が一人でもいたら嬉しいです。
↑メコン川でとれた天然の大きなカイヤンと私です。
今後もメコンの魚たちについてご紹介させていただきますのでこれからもどうぞよろしくお願いいたします。