サイとゾウの耳はそっくりさん!?
2024.08.25 (日)
みなさまこんにちは。展示飼育部の佐藤です。
今日、紹介するメコン川の魚は「サイウオ」と「ゾウの耳ウオ」です。
前回、メコンの魚シリーズでメコン川のキュウリウオを紹介しましたが、
現地では人々の生活の中から発想を得て、身近な生き物に名をつけることがあります。
これはメコン流域だけではなく、日本の生き物たちの名にも見られますよね。
今日、紹介する「サイウオ」と「ゾウの耳ウオ」もそんな生き物たちです!
最初は「サイウオ」についてです。
メコン川流域にもかつてはジャワサイというサイが広く生息していましたが、
密猟や森林破壊などによってメコン川が流れるインドシナ半島では絶滅してしまったそうです。
かつてメコンの川辺や森で暮らしていたサイたちに似ている事から名づけられた
「サイウオ」とは、一体どんな魚なのでしょうか?
その魚がこちらです!
一体、どこがサイなのか?と思われた方もいらっしゃると思いますが、
サイのしゃくれた顔がこの魚の顔つきと似ていませんか?
この魚はオスフロネムス・エクソドン(Osphronemus exodon)という魚で
以前紹介したグラミーの仲間でカンボジアでは北東部のメコン水系に生息しています。
現地名では「サイウオ【トライ(魚)・ローメア(サイ)】」と呼ばれています。
そして次は「ゾウの耳ウオ」です。
カンボジア南西部にはカルダモン山脈という原生林が残る山々があり、
その森には現在も野生のアジアゾウが生息しています。
ゾウといえば長い鼻が一番の特徴ですが、もう一つの特徴は丸く大きな耳ではないでしょうか。
ゾウの耳のように大きく丸い姿がこの地域に生息するオスフロネムス・グラミー(Osphronemus gouramy)と似ていることから、「ゾウの耳ウオ【トライ(魚)・トロチア(耳)・ドムライ(象)】」と呼ばれています。
そこでこの2種類のオスフロネムスですが、並べてみると、とってもよく似ていますよね。
そんな2種類の魚たちですが、それぞれの地域に暮らす人々が名づけた名は、逆の地域では互いに使われることはないようです。それぞれの地域の人たちが自然の中で培った独自の文化なのでしょう。
今回、紹介した「サイウオ」と「ゾウの耳ウオ」は「メコン川中流の魚」水槽(メコンオオナマズのいる水槽のとなり)で展示しております。
一見すると本当にそっくりで、鰭の条数など、学術的に見れば違いははっきりしますが、見慣れてくると、パッと見ただけでも、雰囲気だけで見分けられるようになるはずです。
当館はみなさまのお陰で今年20周年を迎え、暑い夏休み中もたくさんの方々にご来館いただいております。当館へお越しの際にはそっくりな「サイウオ」と「ゾウの耳ウオ」を見比べながら、インドシナ半島では絶滅してしまったジャワサイの顔つきとカルダモンの森に今も生息するアジアゾウの耳を連想して楽しんでいただけると嬉しいです!
最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた!