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メコンのタイガーフィッシュ!

2024.10.01 (火)

佐藤

みなさまこんにちは。展示飼育部の佐藤です。

 

当館で展示する魚たちの中でタイガーフィッシュといえば、アフリカのコンゴ川水槽で展示しているタイガーフィッシュやゴライアスタイガーフィッシュを思い浮かべる方も多いと思いますが、今回紹介する魚は東南アジアを流れるメコン川のタイガーフィッシュです。

 

この魚はフォーバータイガーという名で展示しているダトニオイデス属の魚です。

魚体は黄色と黒色の虎模様であることから、現地のカンボジアではトライ・クラー(虎魚)と呼ばれています。

 

さらに詳しく紹介すると、このダトニオイデス属の魚たちは、東南アジアからニューギニアにかけて5種類が知られており、そのうちの3種類がメコン川で記録されています。

 

日本のアクアリウムでも昭和の熱帯魚ブームの頃から人気のある魚で、現在も根強いファンを多くもつ魚でもあります。

 

 

そんなメコン川のタイガーフィッシュたちですが、豊かな自然環境が失われつつあるメコン川では3種類すべてにおいて、年々減少傾向にあると考えられています。

 

私自身は足掛け約25年に渡り、カンボジアを中心にタイ、ベトナムで魚調査をしてきましたが、この魚に出会うまでには約10年もかかりました。これだけ長い年月がかかった理由は、少ない魚というだけではなく、私にとっては見知らぬ国での魚探しでしたので、自身の力不足も大いに関係しているのですが、それでも他の魚たちと比べると、出会うまでの道のりは長いものとなりました。

 

 

今回はメコン川に生息する3種のタイガーフィッシュの中から当館で展示しているフォーバータイガーとの出会いを紹介します。

カンボジア全土の淡水魚類をすべて見たい!という想いから始めた魚調査の中で、10年探しても見つからない魚が、どのような環境で泳いでいるのだろうか?そんな姿を一度は見てみたい!という気持ちは日に日に強くなっていました。

 

 

 

そんなある日、偶然立ち寄ったメコン川沿いの町での事です。早朝、港に集まって来た魚屋さんの小舟の中に1尾のフォーバータイガーを見つけたのです。私はこの機会を逃すまいと、漁師さんが住む村へ案内してもらい、フォーバータイガーに水中で出会うチャンスを得ました。

 

その舞台はメコン川に浮かぶ小さな島で、数えるほどしか住民はいませんでしたが、ほぼ全世帯が漁師さんで、ちょうどその時期は潜ってフォーバータイガーを採る漁をしているという話を聞くことができました。しかし、翌朝の漁が待ちきれず初日の夜はほとんど眠ることもできませんでした。

 

翌朝、小舟に乗り込み、メコン川本流のポイントへ向かっていると、「ここにいるぞ‼」という声と共に舟が停まり、村の漁師たちと一緒に素潜りでメコン川に潜ってみることになりました。その川底一面は岩盤で覆われ、私でも立てる浅い場所があるかと思えば、そのすぐ脇は急に深くなっている場所もあり、とても起伏の激しい環境でした。しかも足を踏ん張らないと立っていられない程、流れが速い場所でした。

 

その厳しい環境下で私も潜る事に少し慣れてきた頃、「いたぞ‼ついて来い!」という漁師さんの掛け声を聞いて、その場所へ案内してもらいました。一軒家ほどある大岩の斜面を5m潜った時です!ついに、あの虎模様をしたフォーバータイガーが川底の岩陰にひっそりと身を隠している姿が見えたのです。でも残念ながら、さらに2mくらい接近したところで魚に気付かれ、逃げられると同時に私の息も限界が近くなり、水面に浮上することになりました。

これが水中で出会ったフォーバータイガーとの初対面となりました。その後は回数を重ねる毎にフォーバータイガーが好む環境条件が少しずつ分かるようになり、大きな成魚の姿を探してじっくりと観察できるようになりました。しかし、流れが速いため、写真撮影をする余裕はなく、両手は岩にしがみついたり、泳ぐ事にしか使う事ができません。

 

その一方、小さなフォーバータイガーの幼魚たちは比較的流れの緩やかな場所にいる事がわかり、水中でエビを捕食する様子や、仲間同士でケンカする様子などフォーバータイガーの生活の様子を観察する事もできるようになりました。

 

当館で展示しているフォーバータイガーは人懐っこく、クリっとした大きな目が私は大好きです。当館へお越しの際にはぜひフォーバータイガーの姿を探してみてください。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

それではまた!

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カテゴリー  アクア・トトの生き物
キーワード 佐藤
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