カラヒガイの人工授精
2024.10.30 (水)
ハッピーハロウィン!
本日ご紹介するのは、オレンジと黒のしましまの魚、「カラヒガイ」です。また、先日行った人工授精の様子についてもご紹介します。
カラヒガイは中国に生息するヒガイの仲間で、親が二枚貝に産卵し、仔魚は貝の中で成長するという生態を持っています。野生では4~7月ごろが繁殖期ですが、飼育下では条件が整えば秋でも繁殖することがあります。今回はその兆候が見られたため、人工授精に挑戦することにしました。
繁殖期に入った魚の多くには、体に目に見える変化が現れます。
カラヒガイのオスがこちら。
口元に「追星(おいぼし)」と呼ばれる白いつぶつぶが出現します。これは他のオスを牽制したり、メスを刺激して産卵を促したりする役割を持つと言われています。
一方、カラヒガイのメスがこちら。
おしりから白い紐状の「産卵管」が伸びています。この産卵管は、二枚貝の入水管(貝が体に水を取り込む管)にさし込み、卵を産みつけるために使われます。卵を持っていれば伸長するため、採卵できるかどうかの目安にもなります。
さて、いよいよ人工授精の作業に入ります。
基本的な方法はオスもメスも同じです。魚をシャーレの上に取り上げ、腹部を前から後ろに向かって押し、精子、あるいは卵を放出させます。
今回私は初めて行ったのですが、力加減に苦労しました。魚体を傷つけまいと優しく押しても卵は出ません。何度もやり直すと、かえって魚に負担をかけることになります。反対に、強く押しすぎれば内臓を傷つけてしまうかもしれません。
さすがに熟練の先輩スタッフは見事なもので、1匹あたり数秒のペースで、次々と作業を進めていました。私も精進したいと思います。
こうして採取した精子と卵をシャーレで合わせれば、人工授精は完了です。人工授精直後の卵は白く透き通っており、非常に美しい姿をしています。
その後、4日ほどでふ化が始まりました。
そして現在です。ふ化からは2週間ほどが経過しており、自分でエサを取って食べられるようになりました。今はブラインシュリンプという小さな甲殻類を食べ、日に日に大きくなっています。
展示水槽にデビューするのはまだまだ先になりそうですが、引き続き大切に育てていきたいです。ところで、親は横じま模様なのに、子どもは縦じま模様なんですね。この模様がいつ変化するのか、これからの観察が楽しみです。