ポリプのお話
2024.12.12 (木)
みなさんこんにちは。
現在、期間限定でマミズクラゲの展示をしています。
マミズクラゲは池や湖などの淡水に生息するクラゲで、水温の高い夏から秋にかけて現れます。
昨年の秋には木曽川でも発生し、そのときに採集した個体の展示も行っていました。
しかし、マミズクラゲの寿命は2か月程度と短く、一度出た場所で毎年見られるとは限りません。
まさに“神出鬼没”のクラゲ、いつでも採集できる保証はないのです。
そこで、昨年クラゲを採集した際に「ポリプ」も一緒にとることができないかと、ひそかにチャレンジをしていました。
ポリプとは、クラゲの生活史の中の一つの形態で、イソギンチャクのように石などの基質に固着した姿のことをいいます。
マミズクラゲのポリプはこんな形。
つぼのように少し下側が膨らんだ形で、その上にぽこっとした丸い部分があります。
この丸い部分(矢印で示した箇所)が口で、ごはんを食べるところです。
写真のように、2つ(あるいはそれ以上)のポリプがくっついて群体になっていることが多いです。
ポリプは環境が悪くならない限り、何年も生き続けることができ、さらに自らの分身をたくさん作ることができます。
条件が整えばポリプからクラゲを遊離させることが可能なため、このポリプさえ確保できれば、数をコントロールしながら、必要な時にクラゲを増やすことができるのです。
つまり飼育スタッフにとっては、なんとしても手に入れたいもののひとつなのです。
しかしポリプの大きさは1mm程度ととても小さく、野外で肉眼で見つけるのは至難の業。
現地で探すのは諦め、「きっとポリプがついていそうだな」という感じの流木を拾い集め、水族館に持ち帰ることにしました。
そこからは、ひたすら顕微鏡を覗き込み、しらみつぶしにポリプを探す毎日です。
覗いてみるとこんな感じ。
名前こそ詳しくは分かりませんでしたが、いろいろなプランクトンや付着生物がおり、それらをなんとなく見ているだけでも新鮮で面白いものでした。
ところが1か月たち、2か月たち、それでもポリプは見つからず…。
最初の方はわんさかいた小さな生き物たちも姿を消していき、これはポリプもいないんじゃないかな、と半ばあきらめの気持ちで作業だけを続けていました。
そしてある日、小さな枝を顕微鏡で観察していたところ、求めていたシルエットを発見!!
採集から実に3か月以上がたちましたが、ついにマミズクラゲのポリプを見つけることができました。
その後、ポリプにしっかりとごはんをあげ続け、十分に数を増やすことができました。
現在展示しているクラゲは、そのときのポリプから育成を行ったクラゲです。
一年越しに展示に至ったマミズクラゲ、ぜひこの機会にご覧ください。
ポリプの実物も展示していますし、ポリプからクラゲになるまでの過程や、クラゲの体のつくりについての解説パネルもあります。
不思議なその生態から、何か一つでも面白いな、というポイントを見つけていただけたら幸いです。
そして、マミズクラゲのポリプは、もしかしたらみなさんの身近な環境にも潜んでいるかもしれません。
ある日突然そこから、小さなクラゲが姿を現すかも。
そう考えてみると少しだけ、水辺を覗き込んでみたくなりませんか?
もしふわふわただよう小さな生き物を見つけたら、そっと観察してみてくださいね。