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はじめての停電
2025.02.19 (水)
みなさまこんにちは。山下です。入社してまだ1年が経過しておらず、日々はじめてのことでいっぱいです。
そんな中で、当館では特に大きなイベントの1つが先日おこなわれたので、ご紹介します。それは「停電」です。
停電と聞くと、ふーん、くらいに思われる方も多いかもしれません。しかし!今回約6時間電気が止まった状態を経験し、電気がない状態の無力さを痛感しました。
生き物の飼育設備は非常に多岐にわたります。シンプルな飼育設備を図示すると、下図のようになります。
生き物を飼育する水槽、そこで汚れた水を綺麗にするためのろ過槽、そして水を循環させるためのポンプ、というような感じです。
ただ、これはあくまで最もシンプルな場合の話です。これ以外にも水温を調節するための温調機器、エアレーション、照明などなど、非常に様々なものが飼育には必要です。
電気が使えないとどうなるかというと、水槽の水は汚れても綺麗にできず、飼育水の温度は外気温によって変動し、水に溶け込む空気は消費され続け、水槽は真っ暗、といった感じになり、本当に何もできなくなります。
こんなリスクを冒してまで、なぜ停電をするのかというと、電気系統に異常がないか、いったん電気を止めて検査をしないとわからないことがあるからです。検査をせずに突然機械が壊れててんやわんやするよりは、しっかり準備をして停電させ、点検するのが大事ということですね。
さあ、ではどんな準備をするのでしょうか。まず大きな水槽について。ピラルクーがいる水槽やメコンオオナマズがいる水槽などについては、水を循環させるポンプを停止し、温調機器も停止させます。
ただし、真っ暗な状態にすると暴れてしまう魚もいるので、そういった水槽には電池式の作業灯を付けておきます。そしてある程度小さめの水槽は、発電機を回すことで、温調機器も水を循環させるためのポンプも稼働させておくものと、一切を停止させるものとあります。暖かい地域に生息する魚がいる水槽などは、ヒーターを停止させると非常にまずいです。2月の寒い日に停電をおこなうので、小さい水槽ほど外気温による影響を受けて水温が低下しやすく、生き物が死亡してしまいます。そのため、ヒーターなどを稼働させたままにしておきます。各生き物が健康でいられるように、水槽ごとに用意をするわけです。
そんなこんなで準備を終え、いざ停電!館内は暗闇に包まれます。
例えばこちらの写真、昼間のピラルクーがいる水槽の写真です。作業灯が見えるだけで真っ暗なのがわかるかと思います。
このような状態の中で、飼育スタッフは何をするのか?当然見回りです。館内に異常はないか、各々ヘッドライトなどを使用して見て回ります。
ライトの明かりを頼りに、館内を歩き回ります。普段はポンプなどの機械の音が響くバックヤードも、この日は静まり返っています。とても新鮮でした。
見回り以外にも、屋外なんかは明るいので、ペンキの塗り直しといった作業もおこないました。
こちらはゾウガメ舎のペンキを塗る先輩。楽しそうです。
見回りをする中で、静かな館内以外にも大きく変化するものがあります。それは生き物たちの様子です。
昼間でもハコネサンショウウオの幼生やタゴガエルは石の影に隠れることはなく、
アカザは遊泳し、
オオサンショウウオもなんだか活動的でした。
企画展ブースでは赤い目が光っていました。
普段と違う生き物の様子が見られるのはやはり楽しいですね。
ある程度の時間が経ち、点検が終わると停電は終了します。電気が使用できるようになると一気に館内がまばゆい光に包まれます。順次普段通りの飼育設備を稼働させ、異常がないかを再度見回り、停電は終了です。
電気の使えない暗い館内も新鮮でしたが、やはり電気がないと何もできません!
明るい世界の安心感たるや…。といった感じではじめての停電を終えました。普段とは違うことをするため、1つ1つの作業にいつも以上に緊張感があり、終わったころには疲労感が押し寄せました…。しかしこれも生き物のため。今回の経験を忘れず、来年以降も無事に停電を乗り切っていきたく思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。また次のコラムでお会いしましょう!