里親
2019.07.12 (金)
こんにちは。
婚姻色のあらわれたニッポンバラタナゴのオスです。
繁殖期真っただ中で、ものすごくきれいな色になっています。
この個体は、屋外に設置してある繁殖用水槽のものですが、
展示水槽でも、きれいな個体が見られますよ。
写真にすると、いまいち美しさが伝わらないのがはがゆいですね…。
本当に目の覚めるような美しさで、バラタナゴのバラは薔薇色のバラなんだなと実感させられます。
ニッポンバラタナゴは、琵琶湖以西の西日本、四国、九州北部に分布していましたが、生息環境の悪化や外来種のタイリクバラタナゴとの交雑がすすむなど、生息数が激減し、絶滅してしまった地域もあるほどです。環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧ⅠA類に指定されています。
当館で飼育している個体はすべて奈良県産のものですが、奈良県内でも一度は絶滅したと考えられていたほどです。
奈良県のニッポンバラタナゴについては、近畿大学が中心となって保護活動を行っており、当館はその一部を分けていただいています。
このように、アクア・トトぎふは、奈良県産ニッポンバラタナゴの里親、つまり生息地以外での系統保存を目的とした維持管理をまかされている施設のひとつです。
絶やすわけにはいきませんから、しっかり繁殖して子孫をつないでいかなければなりません。
昨年は室内で飼育している個体を人工授精する方法をとりましたが、繁殖数0という苦い結果となってしまいました。
そこで、今年は親魚を屋外で飼育し、自然繁殖と人工授精の二刀流で試みることにしました。
自然繁殖は、水槽内に産卵母貝となるドブガイ類を入れておき、貝の中から稚魚が泳ぎ出てくるのを待つ方法。自然界と同じように貝を見つけて産卵してくれることを願って、ストレスを与えないように気を付けました。
5月の初旬あたりから、毎日毎日、じーーーーっと小さな稚魚が出てきていないか水中を見つめてきました。
そして、やりました!6月6日に1匹の稚魚を見つけました。
6月12日には2匹目を確認。現在までに5匹が自然繁殖により産まれています。
人工授精は、親魚のお腹を軽く押すと、卵と精子が出てきますので、
それを受精させて育てる方法です。
状態の良い卵が採取でき、オスの精子もばっちりでました。
このような段階を経て、現在15匹ほどが育っています。
まだ匹数は少ないですが、どちらのやり方もうまくいきほっとしています。
この稚魚たちは、1年後の春には成熟して繁殖期をむかえます。
来年、バラ色の婚姻色を見せてくれるように、しっかり育てていきます。
そして、いつか奈良県内の生息地が整備されて「ペタキン」が再びなじみのある魚として回復することを願っています。