貝の中に
2013.04.16 (火)
春の訪れとともに、生きものたちの活動も活発になっていますね。
サンショウウオやカナヘビ、カエルの産卵のお話が続いていますが、
もちろん魚たちも産卵シーズンを迎えています。
春に産卵する魚の中で、今回は「カワヒガイ」をご紹介したいと思います。
このカワヒガイ、春になるとオスは婚姻色が出て色づく様子から
岐阜の方では「サクラバエ」などと呼ばれています。
繁殖期を迎えた雄の吻先を見て下さい。
白い模様のようなものが。
これは追星と呼ばれる、コイ科のオスに見られる二次性徴です。
一方で雌はというと。
シリビレの辺りから、白い糸のようなものが。
これは産卵管と呼ばれるものです。
そう、ヒガイの仲間は、ヌマガイやタガイ、イシガイなどの淡水にすむ二枚貝の中に
卵を産みつけるのです。
そこで水族館では、二枚貝の殻を用いてカワヒガイの繁殖を行っています。
殻を輪ゴムでとめて、すき間を作るためにシリコンチューブを挟みます。
出来たものがこちら。
どうせならと貝の入水管や出水管風にチューブを付けてみました。
アサリみたい・・・。
イシガイやヌマガイなどこんな風に管を伸ばすことはないです。
で、結果はといいますと。
貝を開けると、真珠のような丸い卵が。
この卵、同じ貝に卵を産むタナゴの受精卵などと比べると、かなり大きいのです。
正確に言いますと、大きくなるのです。
ヒガイは貝の入水管に産卵管を差し込み、卵を産みつけます。
タナゴでは貝の出水管に産卵管を差し込んで、卵を産みつけるため、
貝の鰓の中に卵は差し込まれるのですが、ヒガイの卵は鰓の外に落ちてしまいます。
そのため、産みつけられた卵は吸水をして大きくなり、
貝が開いても落とされないように変化するのです。
左がシロヒレタビラの受精卵、右が吸水して大きくなったヒガイの受精卵。
もう一枚。
どうですか、かなり大きいことが分かりますね。
イクラ位の大きさですかね。
ヒガイの受精卵は、1~2週間ほどで孵化をして泳ぎ出します。
タナゴの場合は、孵化後に分化が進み、体が出来てきますが、
ヒガイの場合は体が出来あがったあとで孵化します。
ヒガイも二枚貝がないと子孫を残すことが出来ません。
水族館では貝殻を使っていますが、自然の中ではそうはいきません。
現状では、淡水性二枚貝は減少の一途をたどっています。
春のヒガイたちを見たら、そんなことも思い出して頂ければと思います。