赤外線サーモグラフィーの獣医医療への活用
2020.05.01 (金)
みなさん、こんにちは。
獣医の小野です。
今回は、赤外線サーモグラフィーを用いた検査についてのお話です。
赤外線サーモグラフィーとは温度が測定できる映像装置です。
撮影する対象物から放射される赤外線を検出し、その赤外線エネルギー量により
温度分布を測定し、色によってそれを表現します。
温度が高いところは赤く、温度が低いところは青くなります。
実際にカピバラを撮影すると、下の写真のようになります。
では、これをどのように獣医医療に利用するかといいますと
みなさんが風邪を引いたときに熱がでるように動物たちも同じです。
細菌やウイルスなどの悪いものが体の中に侵入すると免疫が反応して
その過程で熱が発生し、悪いところが周りと比較して温度が高くなる傾向があります。
その特性を利用して、動物たちを赤外線サーモグラフィーで観察し、悪い部分を特定します。
例えば、今回の症例はこちら。
カピバラのラーゴがある日、左前肢をかばって歩いているとの報告を受けました。
ラーゴの両肢を赤外線サーモグラフィーで確認すると
1つの指だけが黄色くなっているのがわかりますでしょうか。
ここで細菌感染が起こっていて、痛みが生じて、肢をかばう原因となっているようです。
そのため7日間、抗生物質と痛み止めを投薬した後、
再度、赤外線サーモグラフィーにて確認すると
周りとの温度差もなく、完治したことがわかりました。
このように、赤外線サーモグラフィーは、対象動物に直接触ることなく
温度がわかり、手で触っただけではわからない細かな温度変化も知ることができます。
動物たちは私たち人間のように『お腹が痛い』や『足が痛い』などと痛いところを教えてはくれません。私たちの五感に頼るだけでなく、この赤外線サーモグラフィーのような検査機器を使うことで、言葉が通じない動物たちの異変を少しでも早く気付くことができるようになればと考えています。