みなさまこんにちは。 今回の飼育コラムでは、少し前にもちらっと登場したあの魚について、つらつらとご紹介していこうと思います。 その魚とは… コノシロです! コノシロ、お寿司屋さんではコハダという名前で出てきます。 知っている人も多い、身近な魚なのではないでしょうか。 ただみなさん、コノシロを水族館で見たことがある人は果たしていらっしゃいますか? 実はコノシロを展示している水族館はそんなに多くありません。 それがなぜなのか、今回展示に挑戦してみて分かった気がします。 それは…「シンプルに飼育が難しいから」のような気がします。 今回のコラムは、何がそんなに難しいのか、どういった血のにじむような努力があったのか、その片鱗でもいいので、このコラムを読んでくださっている皆様に届くことを願って書いております。 コノシロ飼育の難しい点その① 狭い場所ではダメ! コノシロは基本的には海域に生息し、産卵期の4~5月に汽水域に回遊する魚です。 そのため、個体を当館に搬入してすぐ、海水の予備槽へ入れて様子を見ることとしました。 当館は基本的には淡水の水槽ばかりで、少しなら海水の水槽がある、という状態です。 それは予備槽も同様で、淡水の予備槽に比べると非常に数は少ないです。 コノシロは遊泳魚だし、一番大きい予備槽へ入れよう、となりました。 しかし、狭かったのでしょう。 当館の海水予備槽ではコノシロを落ち着かせるには足りませんでした…。 水槽内の壁にぶつかり、ぽろぽろ鱗がはがれてしまいます…。 これはまずい、ということになり、ダメもとで最も大きな海水の展示槽へ移すこととなりました。 現在も展示を継続している、河口の魚水槽です。 壁への激突も治まり、今ではすいすい優雅に泳ぐコノシロを見ることができます。 コノシロ飼育の難しい点② ごはんを食べるようにならない! コノシロは搬入当初、本当にごはんを食べませんでした。 同じ水槽にはスズキやクロダイなど、様々な魚が入っており、週に5日様々なごはんを与えています。 しかしコノシロは一切食べるそぶりを見せません。 そんな日が続き、コノシロがごはんを食べずはや幾星霜。 このまま衰弱してしまうのではと焦っていた時、先輩からごはんを食べたとの連絡がありました。 話を聞くと、なになに「食べたごはんはおとひめ」? それを聞き、「食べるのか、これ食べるのか?」と思いました。 おとひめというのは配合餌料の一種で、粒径はおよそ0.5mmです。 これを水中にふわふわ漂わせると、パクパク食べるというのです。 試してみると…食べました!これ食べました! ふわふわしているとこを食べました! コノシロがおとひめを食べるようになってはや幾星霜。 まだまだ問題は残っています。 おとひめはあまりにも小さい…。 コノシロのために大量に水槽に撒いても、おそらくコノシロをおなか一杯にすることは難しく、水槽もかなりのペースで汚れていきます。 より大きなごはんを食べるようになって欲しいところです。 そこで次はアミエビのミンチを試してみることにしました。 大きさはだいたい1.5mmといったところ。 「食べてくれ、これ食べてくれ」と与えてみると… 無事食べました! ここで調子に乗った山下、アミエビでもいけるのでは?と思い、水槽に投入しました。 すると、食べました!アミエビでもいけました! その後も細かなサバミンチ 粗めのサバミンチというように粒径を大きくしていき… 現在は6mm角ほどに切ったサバコマを食べるようになりました。 鱗のはがれた部分も徐々に治り、現在は安定した飼育ができていると思われます。 しかし本来は群れで泳ぐ魚です。 コノシロが群れて泳ぐ様子をお見せできるよう、日々精進してまいります。