みなさまこんにちは。展示飼育部の山下です。 今は2025年5月です。2025!?時が進むのが早すぎます。体感2024年の5月です。入社してはや1年が経過したのですね…。 さて気を取り直して2025年5月。暖かな日が増え、雨が降るとカエルの鳴く声が聞こえてくる季節になりました。みなさま、カエルについては昨年12月にとあるトピックがあったのをご存じでしょうか。実はみなさんもよくご存じの生き物が2種類に分けられたので、ご紹介しようと思います。その生き物とはこちら! Dryophytes japonicus ニホンアマガエルです! これまで、日本全国に広くニホンアマガエルが分布するとされていましたが、実はニホンアマガエルという種類は遺伝的に異なる2集団に分けられる、ということがわかっていました。 そして先日、愛知教育大と京都大学の研究グループにより、ニホンアマガエルとは異なる集団がDryophytes leopardus 新標準和名ヒガシニホンアマガエルとして新種記載されました。 ニホンアマガエルは近畿地方の辺りを境にして、日本の南西部と韓国などに分布し、ヒガシニホンアマガエルは日本の北東部とサハリンなどに分布するそうです。岐阜の個体はニホンアマガエルではなく、ヒガシニホンアマガエルの集団に含まれることになります。当館の種名板も今回の記載を受けて更新しました。 「なんで岐阜が含まれる集団の名前が変わったんだ!岐阜が含まれる集団はニホンアマガエルのままで、南西の集団をニシニホンアマガエルにしたらいいじゃないか!そうしたらわざわざ水族館の種名板を更新しなくてもいいじゃないか!」と思う方もいらっしゃるかもしれません。ところがそうもいかないんです。 新種を記載する際には、その生物のここがほかの生物と違うんですよ、という特徴を保証するためのタイプ標本というものを指定する必要があります。ニホンアマガエルという種類を記載する際に指定されていた標本の特徴は、南西の集団でよく見られる特徴と合致することがわかりました。 そのため、真のDryophytes japonicus ニホンアマガエルはおそらく南西の集団のことであり、北東の集団に新しく学名を付ける必要がある、ということになりました。 そのため、北東の集団にDryophytes leopardus ヒガシニホンアマガエルという名前が付けられたのです。このあたりの話はけっこう複雑ですので詳細は省きますが、気になる方はぜひご自分で調べてみてください。 「じゃあその特徴ってのはなんなんだ!」という方もいらっしゃると思うので、これからご紹介します。 どうやらヒガシニホンアマガエルは太ももの裏側にヒョウ柄模様が見られる場合が多いようです。当館で展示している個体を確認してみると… 確かに、白と黒のまだら模様がなんとなくヒョウ柄のように見えます。 ヒガシニホンアマガエルではこのヒョウ柄模様が見られる場合が多いため、ヒョウを意味するleopardus という種小名が付けられました。 ニホンアマガエルではあまりまだら模様にならず、一様な模様になることが多いようです。 ただ、この特徴だけで完璧に2種を区別することは難しく、中にはヒョウ柄模様のあるニホンアマガエルがみられる可能性があるそうなので、注意が必要です。 ぜひみなさんも、家の近所のアマガエルを見てみてください。めちゃくちゃヒョウみたいな模様してる!みたいな発見があるかもしれません。 今回のコラムはいかがでしたでしょうか。なんとなくニホンアマガエルがどうなったのか、理解していただけましたでしょうか。私はこのコラムを書いてみて、簡単に説明することの難しさを痛感しております。 ヒガシニホンアマガエルの記載論文は、調べたら誰でも読むことができます。気になる方は読んでみてください。このコラムでは記載論文のほんの一部しか紹介できておりません…。 それではまた次のコラムでお会いしましょう!