おもしろ飼育コラム

新春のおめでタイ話
  • 新しい展示
  • 日本の淡水魚

新春のおめでタイ話

こんにちは。 今日は「河口の魚」水槽からのお知らせです。 「キチヌ」が仲間入りしました。 ヒレが部分的に黄色いことから「キビレ」とも呼ばれます。 2016年の春に、ボラの群れに混じり泳いでいた2~3cmほどの なにやらタイっぽい稚魚を見つけたことが始まりです。 「これはクロダイか?いや小さすぎてわからない…。」というわけで、 2個体を水族館に持ち帰り、育てることにしました。   見つけた時は、ボラの群れに混じり泳いでいたのですが、 2個体を同じ水槽に入れてみたところ猛ゲンカ。 さらに、一緒の水槽に入れていた大きめのハゼも、つつかれて骨とヒレだけにされ、 いくつか入っていたシジミもすべてつつかれて食べられてしまうありさまでした。 これは一言でいうと失敗ですが、この経験により、 キチヌの食性や、エサの食べ方、気の荒さなどがよくわかりました。 そして、わたしはそんな気性の荒さにひかれ、すっかりキチヌのとりこになってしまったのす。   それからは単独で育てることにしました。 クロダイの幼魚に見られるしま模様がないので、キチヌではないか?と予想はしていましたが、 決め手となるウロコの数を確認してみるとやっぱりキチヌ!!   と確信した矢先、残念なことに1尾は急死。 当日私は休みだったのですが、複数のスタッフから「キチヌ死にました。」 と画像つきの連絡を受けたのでした…。 まだ展示もしていない小さなタイ1匹のことで、こんな連絡をもらうとは、 私のキチヌ愛が相当のものだったことが分かります。 残ったほうのキチヌは、ウロコの感じがキチヌらしくないのですが、 展示水槽に移動して立派に成長した今では、ヒレのふちが黄色く染まり、 顔だちもすっかりキチヌキチヌしています。 しばらく様子見をした後、解説板を取り付け、そしてさらに1個体を追加して、 今では大きさの違う2匹が元気に泳いでいます。 きらきらのウロコに、ぴんとのばした黄色いヒレ、目が大きくて、 口はきゅっとしまったとても美形の魚です。 新春のおめでタイ時期に、ぜひ見に来てください!       Tweet

巻き付き産卵
  • 日本の淡水魚

巻き付き産卵

明けましておめでとうございます。 寒い日が続くので、外に出かけるものためらいたくなりますね。 そんなとき私は、こんな動画をみて 天気が良くなったときや、暖かくなったときに向けて モチベーションを高めています。     こちらの動画は、昨年のブログで何度も登場した トウカイコガタスジシマドジョウの産卵の瞬間です。 オスがメスに巻きついて産卵することは話には聞いていましたが、 生でみると感動します。   ちなみに、この動画は自宅の水槽で撮影したものです。 なにやら怪しい動きをしているなと観察していたら、 産卵がはじまったので慌てて撮影をはじめた次第です。 一度のみならず、数分間の間隔で何回か観察できました。   自然では、写真にあるような水田やワンドなどで産卵したりします。   産卵した瞬間に底砂を巻き上げて卵を産めている様子も観察できたので、 実際(自然下)では先ほどの動画のように、 ここまで他の魚に食べられてしまうこともないと思います。   できれば “自然で産卵している瞬間を記録したい” 、 これが今年の目標の一つです。     Tweet

トビハゼのおやつ
  • 日本の淡水魚

トビハゼのおやつ

こんにちは。クリスマスが終わり、もう2017年も今日が最後です。 寒さの真っただ中ではありますが、 「冬じゃないよ、冬じゃないよ。気のせい気のせい。」と語りかけながら 世話をしている生き物がいます。 それは、本来なら冬眠しているはずのトビハゼです。 土に潜って冬眠してしまうと、 砂と水だけの「空っぽな水槽」になってしまいますからね。 展示水槽内を温かくし、冬じゃないよと語りかけて冬眠しないようにしています。 でも食欲はいまひとつ。冬眠していないので食べないとやせてしまうのに、 夏場のようにモリモリ食べようとしません。   そこで、週に2回ほどですが活きた「コオロギ」を与えるようにしています。 ふだんは冷凍のアカムシや、配合餌料、魚肉などをあたえていて、 一応は食べるものの、グズグズ食べ。 そんなときにコオロギを与えると、 勢いよく近づいてきてコオロギにとびかかります。 コオロギが植物や岩の上に上がっていくと、 トビハゼが見事にジャンプをして食べることもありますが、 残念ながら撮影時はご覧のように地味な食べ方でした。   野生のトビハゼは、ゴカイや虫など小さくて動くものなら、 貪欲に何でも食べるようです。 夏の夜、干潟近くの岸壁には、小さいコオロギが無数にはりついているので、 きっとコオロギも食べていることでしょう。   トビハゼのいる「河口の生き物」水槽には、 もう1種類アベハゼというハゼも展示しています。 石のすき間などに隠れているため、気付かずスルーしてしまうかもしれませんが、 とてもきれいな色と模様をしています。 こちらのアベハゼも、ピンチの時などには陸の上をぴょこぴょこと 移動する水陸両用タイプのハゼです。 (まだ移動するところを見たことはありません) それではみなさま、今年1年ハゼともどもお世話になりまして、 ありがとうございました。よいお年をお迎えください。       Tweet

ここに注目
  • 日本の淡水魚

ここに注目

トウカイコガタスジシマドジョウ。 一度聞いただけではなかなか覚えていただけないかもしれませんが、 おもしろい特徴がある魚です。 体の模様が変化することが一つの特徴で、 普段は上の写真のように点列の模様が並んでいます。 繁殖期になると、オスの個体の模様は縦帯になります。 一番上の写真はメスの個体ですが、基本的にメスは点列のままです。 繁殖期であれば、模様の違いでオスとメスを見分けることができます。 このほかにもオスとメスの違いとして、胸ビレに注目。 メスの胸ビレに比べるとオスの胸ビレ大きく、先がとがっています。 そして、付け根のところに丸いものが見えるでしょうか? オスの胸ビレの付け根には、骨質盤と呼ばれるものがあります。 小さいですが、しっかりと肉眼でも確認できるものです。 一方で、上の写真のメスの胸ビレをみても骨質盤はなく、 少し丸みのある形になっています。 ちなみに、今年繁殖したトウカイコガタスジシマドジョウの 稚魚の胸ビレはどうでしょうか? 現在で体長3cmほどに成長しました。 写真の個体がオスかメスかわかりませんが、 ヒレの形からするとオスのような気もします。 肝心の胸ビレはまだまだ小さく、骨質盤を肉眼でみるには難しいようです。 そして、ヒレに注目していると、 ある個体ではヒレの発育が通常ではないものが見受けられました。 本来であれば砂があるような環境に生息していますが、 砂もなにもない水槽と、わずかに砂が入れてある水槽とでは、 ヒレの発達状況が異なりました。 砂がないと水槽の底でヒレが擦れてしまっているのではないかと考えています。 遊泳魚であれば特に砂はなくても大丈夫ですが、 ドジョウのような底物にはちゃんと砂が必要なのでしょう。 話はそれましたが、 岐阜県にいるドジョウの仲間でいえば、 ドジョウ、ニシシマドジョウ、トウカイコガタスジシマドジョウの それぞれで骨質盤の形が違います。 ぜひ注目してみてください。   Tweet

高揚感
  • 日本の淡水魚

高揚感

こんにちは。 皆さんはどんな魚がお好きでしょうか? 色々あるかと思いますが、私はこのシマドジョウ類が好きです。 この魚を採集するときは、川の中流からやや上流あたりに 行くわけですが、捕まえるには少しコツがあります。 シマドジョウ類は、このような 少し流れが緩やかで、砂が堆積してるような場所にいます。 砂のなかに潜ったりしているので、 この砂ごとすくいあげるようなイメージでガサガサするとうまく採れます。 網の中をのぞいてみると、砂の中から力強く現れるこの瞬間がたまりません。 そして、水もきれいで冷たいので清々しい気持ちになります。 魚の体も、その水にふさわしいきれいな体をしているように思います。 先日、これらのシマドジョウ類よりも上流に生息する アジメドジョウを採りにいく機会がありました。 アジメドジョウは岐阜県では比較的多く見かける魚で、 郷土料理にも使われたりするほど味が良い魚としても知られています。 このアジメドジョウは、太平洋側の個体と日本海側の個体で 体の大きさや模様に違いがあるようです。 太平洋側の個体は岐阜県で何度も採ったことがあり、 水族館でも展示しているので見慣れていますが、 今回初めて日本海側の個体を採ったときには正直驚きました。 実際に生でみると全然違いました。 日本海側のものは大きくて、太い。 模様もより細やかな印象をうけました。 上が太平洋側の個体、下が日本海側の個体です。 もちろん、同じ生息地においても個体ごとにわずかな差はあったりしますが、 ここまでの差はないように思います。 同じ種であっても地域によって体の模様や大きさ、 婚姻色など色々な違いがあることは、多くの種において知られています。 例えば、タナゴの仲間であるアブラボテ。 上の写真が九州でみたアブラボテ、 下の写真が東海地方でみたアブラボテです。 これもまた色々な違いがあるのがお分かりいただけるでしょうか。 その場所でしかみることができないもの、 それはまさにその土地の宝物であるように感じます。 その場所で見てこそ本当の価値があるのでしょう。 これからも色々な魚との出会いを通じて、 その素晴らしさを感じることができる感覚をもっと養っていきたいものです。   Tweet

冷たい水の中で
  • アクア・トトの生き物
  • 日本の淡水魚

冷たい水の中で

こんにちは。秋真っ只中ですね。 冬になりさらに水温が下がると、魚によっては、じっとしている時間が増えて、 エサを食べる量も減ってきます。 ですが、春に産卵するタイプの魚にとっては、秋から冬にかけてこそ、 繁殖に備えた体づくりをする大切な季節でもあります。 ところで、こちらの写真ですが、これはふ化直前のビリンゴの卵です。 ビリンゴはウキゴリの仲間で、この地方では「ゴリの佃煮」として売られています。 ビリンゴも初春に産卵します。 昨年の秋から春にかけて、水温や照明の時間を操作するなど、 繁殖に備えた体づくりをサポートしたところ、3月7日に産卵しました。 3月?今さら?という感じもしますが、 先日ようやく育った若魚を展示水槽に入れることができましたので、 このタイミングでのお知らせとなりました。 ふだんのビリンゴはこんな感じで、 透きとおったような薄茶色の体に黒い背ビレが特徴です。 それが繁殖期を迎えたメスは大変身! 近くにオスがいないとここまで黒くはならないのと、 カメラを構えたりして人の気配を感じると、 色が薄れるので写真をとるのは苦労しました。 寒い冬が終わり、水温10℃以上になると繁殖行動を開始するそうで、 水槽内でも水温12℃のときに盛んにメスがオスにアピールしていました。 12℃というと、手を入れるとめっちゃ冷たい。 スイカだったらキンキンに冷える水温です。 オスは巣穴で待機していて、そこにメスがアピールするのがビリンゴの求愛です。 本来は川の泥底にある穴を利用して(あるいは穴をほって)、 それを巣穴とするのですが、 予備槽では細いパイプを巣穴として利用してくれました。 産卵が終わってもオスは巣穴に残り、 胸ビレを使って卵に新鮮な水を送るなど、ふ化するまで卵を守ります。 水温が低いこの時期ですから、ふ化まで約1カ月もかかります。 そして誕生したのが、こちらです。体長は6.5ミリ。 ふ化直後にしては、わりとしっかりとした体つきをしています。 数日たって遊泳力がついてくると、とにかく臆病で、 逃げて水槽にぶつかるため、 これ以降の写真は撮れませんでした。 ですが、ふ化したほとんどの個体が生き残り、今は展示水槽と、 来年の繁殖に向けた予備水槽とに分かれて元気にしています。 ビリンゴの繁殖は、当館ではこれが初めての試みでしたが、 奇跡的に成功しました。まぐれかもしれません。 そのため大事なのはこれからです。 当館で産まれた個体が育ち、やがて成魚となり、 うまく繁殖してくれるでしょうか? 水温だけでなく、日照時間、エサの量や種類、水質などなど、 気を遣うことが多すぎて、今年もひやひやな冬を送る予定です。 Tweet

セイメイ
  • 日本の淡水魚

セイメイ

みなさん、こんにちは。 少し前のブログでオイカワの話をさせていただきました。 その後、こまめにオイカワの様子を観察していたところ、 見事オイカワが産卵する瞬間を撮影することに成功しました。 ペアとなったオイカワが数分間に一回のペースで 産卵を繰り返しておりました。 今回の産卵は、お客様が帰られた後に 館内を見回りをしながら気づいたことでした。 飼育スタッフであれば朝から晩まで水族館にいるので、 じっくりと生き物の観察ができそうですが、 館内でいろいろな仕事があり あっちでうろうろ、こっちでうろうろしているので、 日中は時間をかけて観察はできません。 実はお客様のほうがじっくり観察できて、 色々な発見をされているかもしれません。 夜間の生き物の行動を観察するということであれば、 飼育スタッフのほうが色々な気づきもあるのでしょう。 生き物の生き物らしい姿は何度見ても飽きることのない、 人を惹きつける不思議な力をもっているように感じます。 水槽に生き物を入れて終わりの展示ではなく、 生き物のあらゆる本来の生態が観察できるような魅せる展示を 創出していきたいところです。 さて、産卵を確認してから何日か後に水槽を観察していると オイカワの稚魚が泳いでいました。 新しい命が確実に育っています。 通常、水槽の水はろ過器を通して循環しているので、 魚のエサとなるようなプランクトンなどは取り除かれてしまいます。 ただ、こちらの水槽は屋外にあり、落葉があったりコケもよくはえるので、 稚魚のエサとなるようなものが何かしらあるのかもしれません。 まさに自然のなせる業なんでしょう。 この水槽の中で世代交代が繰り返されるようになれば本望です。 Tweet

渾身の婚姻色
  • 日本の淡水魚

渾身の婚姻色

オイカワと聞くと、皆さんの印象はどうでしょうか? 淡水魚の“オイカワ”を思い浮かべた方は、 普通の魚で、どこにでもいるという感じでしょうか? オイカワは上流のほうから下流の方まで広範囲に見られ、 多少環境が変わっても生き残っている、 そんな一面もある魚です。 アクア・トト ぎふのオイカワは、 長良川の上流から中流エリアの水槽で展示しているので、 それなりに流れがあり、夏場でも水温はやや低めになっています。 この水槽の場合、天井からわずかに太陽の光も差し込むので、 水族館の中ですが、多少の季節感も感じられます。 繁殖期の夏前になると、オスのオイカワにはきれいな婚姻色がでます。 このままでも十分きれいですが、どこか物足りない、 色がぬけてしまっている感じがあります。 オイカワを、太陽の日がもっとしっかりあたる別の水槽に移動すれば “オイカワ映えする”のではないか、ということで 1つの候補として下流の水槽で試してみました。 この水槽には、モツゴ、タモロコ、ワタカ、ボラ、ゴクラクハゼ などを展示しています。 秋になると大迫力のイタセンパラの大群泳を展示する水槽です。 (イタセンパラは年魚のため、秋から冬までの期間限定の展示となっています。) さて、この水槽は屋外にあり、太陽の光もしっかりとあたり、 底が砂利になっているので、オイカワを展示すれば きれいな婚姻色がでたり、オス同士が激しく争ったり、 産卵行動までみせくれるのではないかと考えています。 上流から中流エリアの水槽にいるオイカワはそのままで、 少しずつこの下流の水槽に採集してきた個体や、 タッチングプールでお客様によって育てられたパワフルな個体を展示して 様子をみていこうと思っています。 オイカワの体色は、タモロコやモツゴなどと比べると全然ちがうので かなり目立ちます。 よく泳ぎ回るので、さらに目立ちます。 顔のまわりの追星、体色、ヒレの色、圧巻です。 見るものを惹きつけます。 残念ながら写真や動画だと本物には劣ってしまいます。 この光景はぜひ生でご覧いただきたいと思います。 Tweet

ウキゴリ故郷にかえる
  • アクア・トトの生き物
  • 日本の淡水魚

ウキゴリ故郷にかえる

こんにちは。あっという間に秋になりましたね。 涼しくて食欲も増し増しです。 さて今日は5月に「こちらのブログ」で紹介いたしました ウキゴリの稚魚のその後についてのお知らせです。 稚魚の展示は6月の初旬に終了しましたが、 その後もちゃんと元気に生きてますよ~。 あれからたった3カ月ちょっとしかたっていませんが、 見違えるように大きくなりました。 4月↓ 5月↓ そして現在はこんなかんじ。 9月↓ どうですか?どこからどう見てもウキゴリですよね。 背ビレの後ろのほうに、黒と白の模様もちゃんとでています。 稚魚期はあまり泳がず茶柱のようでしたが、 今やしっかりと群れてホバリングしています。 時に泳ぎ、時に潜り、食欲も増し増しです。 大きさは、大きいもので6cmぐらいになりました。 展示槽の石の下に産みつけられていた卵からフ化したのが4月20日。 それから、成長に合わせてあっちこっちの予備槽を転々として育ちました。 その稚魚たちが今、まさに展示デビューを迎えています。 展示する水槽は、稚魚たちが産まれた故郷の水槽。 先日こそっと第1陣を展示槽に入れてみたところ、 無事に生存しているのが確認できましたので、 今日、第2陣を送り込みました。 この展示槽は、とにかくカワヒガイがエサをかっさらっていくので、 若いウキゴリたちがしっかりエサにありつけるか…。かなり心配です。 そして、油断すると石のすき間にかくれている 巨大なヌマチチブに バクッとやられるおそれもあり、さらに心配です。 でも、たくましく生き残ってほしい。 そしてまたこの水槽で産卵してくれるといいな。 みなさまもちょっと小ぶりなウキゴリを見つけたら、 ぜひ応援してあげてください。 それから、アクア・トト ぎふにもう一種いるウキゴリの仲間のビリンゴも、 この春に産まれた若魚を展示に加えました。 こちらは「下流のカニ」水槽にいます。 ビリンゴの繁殖についても、またブログを書きますね。 おたのしみに。 Tweet

新たな一歩
  • 日本の淡水魚

新たな一歩

みなさん、こんにちは。 アクア・トト ぎふの3Fにあるこちらのワンド水槽では、 ゼゼラを展示しています。 川で魚を採っていても普通の人にはあまり馴染みのない魚かと思いますが、 アクア・トト ぎふがあるこの濃尾平野では、 ワンドなどのように水深が浅く、 流れが穏やかな場所に行けばよく見かける魚です。 このような場所は、川の増水により適度にかき混ぜられること(攪乱)で 良い環境が保たれており、 多くの魚類が繁殖に利用したり、繁殖した稚魚が育つ場所にもなります。 しかし現在では、樹林化が進み攪乱が起きにくいことから、 水質や底質の悪化を招き、 ワンドのような環境を利用する魚の多くが生息数を減らしました。 中には絶滅危惧種に指定されている種も少なくありません。 そんな魚類を保護していくためには、本来の生息地における取組(保全)と その生息地とは別の場所での取り組み(保存)の 両方の取り組みが欠かせません。 水族館で働く私にできることとしては、 飼育下における繁殖方法を確立させることで 野外ではなかなか観察できない繁殖生態の解明であったり、 繁殖・飼育・展示を通じて普及啓発を行なっていくことなどが挙げられます。 冒頭で紹介したゼゼラについては、 当初、当館では展示しておりませんでした。 普通に飼育するのも少しクセがあり、痩せやすいことや臆病なことから 展示が避けられていた経緯がありました。 そんななかでバックヤードである程度飼育できる目途が立ったことから、 2016年5月から展示を開始し、あわせて繁殖にも取り組んできました。 繁殖には屋外の水槽を使用しました。 この場所はそこまで人も通ることもないので、 魚にとっては落ち着いて過ごせる場所であったかと思います。 毎日のエサをあたえて、水温を計測して、 あとは繁茂してくるアオミドロなどの藻類を定期的に取り除くぐらいで、 できるだけ自然に近い状態で維持管理していきました。 1年目の昨年は何も手ごたえを感じることなく繁殖期を終えてしまいました。 そして、2年目の今年は見事繁殖に成功しました。 まだまだ小さいですが、まぎれもなくゼゼラです。 前回紹介させていただいたトウカイコガタスジシマドジョウは ホルモンを使用して繁殖させた経緯がありますが、 今回のゼゼラは自然に産卵しました。 今回の事例は、当館にとっては初の繁殖です。 もう少しこまめに見ていれば、卵や、ふ化直後の様子など 写真に残すこともできたのでしょう。そこだけが悔やまれます。 ちなみに卵としてはこのような感じです。 ゼリー状になっており、よく見てみるとこまかな卵が無数にあります。 こちらの写真は、ゼゼラの繁殖について色々とアドバイスをして応援してくれている ゼゼラのスペシャリストからお借りしたものです。 なかなかゼゼラだけに力を注ぐこともできない現状もあるのですが、 今回の繁殖を偶然ではなく、必然にするためにもなんとかしたいですね。 痩せたり病気にならないように、しっかりとエサをあげて良い状態を保つこと、 そこからいかに繁殖させていくか、繁殖させたものを いかに育てていくか、 まさに飼育技術そのものです。 そして、その技術が水族館の財産にもなっていくわけですから、 挑戦しない理由はないでしょう。 では、最後にゼゼラの稚魚がエサを食べる様子をご覧ください。 底のエサをついばむように食べるのは、特徴的なエサの食べ方かと思います。 Tweet

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本日の開館時間

9:30-18:00

最終入館 17:00

世界淡水魚園水族館 アクア・トト ぎふ

〒501-6021 岐阜県各務原市川島笠田町1453

TEL 0586-89-8200 FAX 0586-89-8201

2回分の料金で何度でも楽しめる!

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