おもしろ飼育コラム

魚病闘病日記パート⑦(ファイヤースパイニィイールの寄生虫)
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魚病闘病日記パート⑦(ファイヤースパイニィイールの寄生虫)

みなさん、こんにちは。 少しずつ暑くなってきました。気温の変化にご注意くださいね。   魚病闘病日記、久々の更新です。 約1年ぶり、ちなみに前回はプロトプテルス・ドロイの治療についてのお話でした。     さて、今回は水族館で飼育している魚から見つかった寄生虫についてのお話です。   さかのぼること、なんと5年前! 2020年に搬入したファイヤースパイニィイール5匹がなかなかエサを食べず、体調の悪い状態が続きました。     ↓ファイヤースパイニィイールはこちら 実は、メコンオオナマズがいる水槽で展示している魚でトゲウナギと呼ばれる魚の仲間です。     1匹のファイヤースパイニィイールが残念ながら死亡してしまい、死因を調べるために剖検(※1)を行いました。   腹腔内や腸管内に寄生虫がたくさん認められました。その他の臓器についても病理検査に出してみましたが、寄生虫感染以外に目立った病変はありませんでした。   ※1 剖検とは 生き物が死んだ原因などを検査するために、死亡した生き物を解剖すること。     (閲覧注意:魚の内臓の写真があります。) ↓剖検様子はこちら、黄色丸のところに赤色の寄生虫がいることがわかります   寄生虫が体調不良の原因ではないかと考え、駆虫剤の薬浴を開始しました。 しかし、残り4匹の状態は良くならず、エサも食べないままです。 さらに1匹の死亡が認められてしまいました。   その個体も剖検しましたが、1匹目と同様に、寄生虫の感染以外に病変が認められません。 薬浴では駆虫できないと思い、駆虫剤を経口で与えることにしました。   すると、数日後に1匹がエサを食べ始めました。また、2週間後にもう1匹食べ始め、投薬を始めて2ヶ月後には最後の1匹も摂餌を確認することができました。 なんとか、残った3匹は体調が回復し、順調に成長していきました。     しかし、ここで問題が1つ。 ファイヤースパイニィイールから完全に寄生虫を排除できたかはわかりません。 そのため、他の魚と同居させてしまうと飼育水を介して寄生虫が移ってしまう可能性があります。   そこで、寄生虫を調べるため、岐阜大学獣医寄生虫病学研究室の高島先生に寄生虫の同定を依頼しました。   高島先生に、今まで調べられて知られている寄生虫の形の特徴と比較して、どの種や属に属するのかを調べてもらうこととなりました。 さらに同研究室の齋藤先生も加わり、同定してもらった結果、カマラヌス属の線虫であることがわかりました。     残念ながらカマラヌス属の生活環(※2)はまだわかっておらず、ファイヤースパイニィイールは他の魚と同居することができませんでした。 展示水槽へのデビューは叶いませんでしたが、現在もバックヤードの水槽で飼育管理を行っています。   ※2 生活環とは 寄生虫の卵や幼虫が発育、変態して成虫となり、次の世代を生じるまでのサイクルのこと。寄生虫によっては、成熟するために他の生き物(中間宿主)に一度、寄生しないといけないものもいる。     また、今回見つかった寄生虫がカマラヌス属の特徴をもつことまでは判明しましたが、報告されている文献と比較しても形が全く同じものが見つからず、もしかして新種?!という状況になりました。   そこで、高島先生と齋藤先生は世界中からカマラヌス属に関する文献を取り寄せ、今回検出された寄生虫と比較されたそうです。 文献は膨大な量になっていましたが、資料をまとめた先生方は「この資料でカマラヌス属全て同定できるようになりました」と満足げな顔をされていました。   今回は、メスの寄生虫しか検出されなかったことより、新種であることを確定させることはできませんでしたが、寄生虫の形態とDNA情報だけではなく、寄生された魚の症状についてもまとめた貴重なデータを発表することができたとのことです。     これらの結果が、2025年3月に寄生虫の雑誌である『The Journal of Parasitology』に論文掲載されました。キレイな寄生虫の写真が載っていますのでぜひご覧ください。   https://bioone.org/journals/journal-of-parasitology/volume-111/issue-2/24-58/Molecular-Characterization-and-Morphological-Observation-of-Zeylanema-Nematodes-in-the/10.1645/24-58.short     水族館にやってくる生き物は、さまざまな場所からやってきます。 そのときに病気にかかっている可能性もあり、検疫することの大事さを痛感した事例でした。 今後も、水族館の生き物を健康に管理できるよう頑張っていきます!     ↓最後におまけ テーマ水槽『うなぎのぼりの恵方巻』でも活躍してくれました

魚類闘病日記パート⑥
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魚類闘病日記パート⑥

みなさま、こんにちは。 今回はプロトプテルス・ドロイの治療についてです。   こちらの魚は2階の「コンゴ川 下流の魚」水槽で展示されています。     先月、予備水槽で飼育しているプロトプテルス・ドロイにある異変が確認されました。   お分かりいただけるでしょうか? からだの一部が浮き上がってしまっている状態になっています。   実は、こちらのプロトプテルス・ドロイはハイギョの仲間になります。 ハイギョは私たちと同じように、直接空気を肺に取りこんで呼吸を行います。 そのため、水面まで浮上して空気を吸う必要があります。     少しでも呼吸がしやすいよう、水槽の水位をさげました。 過去にハイギョの仲間がこのような状態になったことをみたことがあるスタッフ曰く、 水位をさげて管理しても、体が浮き上がることが治らないと死んでしまうとのこと。   何かできないだろうかと、まずは浮き上がっている原因を調べることにしました。 おそらく浮き上がっている部分に空気が入っているだろうと、 プロトプテルス・ドロイを保定して注射針を刺してみました。 すると、予想通り少し空気が抜け、下の写真のように浮きあがることがなくなりました!   しかし、数分後には元の状態に戻ってしまったことから、おそらくお腹の中になんらかの異常があるのではないかと考えられました。 空気(ガス)が貯まりそうな場所は、肺や消化管が考えられます。   ハイギョの肺や消化管の病気について調べても、ほとんど情報がなく、行き詰ってしまいました…。 そこで、ハイギョ以外の魚において浮き上がってしまう病気について調べると 鰾(うきぶくろ)の異常で同じような症状を確認することができました。   鰾の異常では、細菌や真菌、寄生虫感染が関与していると言われています。 原因を特定するためには麻酔下で肺や消化管を直接、確認する必要があり、その方法ではプロトプテルス・ドロイに負担がかかり過ぎてしまいます。 そのため、診断的治療として毎日、抗生物質の筋肉注射を行い、経過をみてみることにしました。     治療を始めてから4日目の朝、プロトプテルス・ドロイの様子を見に行くと、すっぽりと隠れ家である塩ビ管の中に入ってこちらを見ていました。 おっ!これは良くなってきたのではないかと思い、一旦、治療を中断し、摂餌欲が回復するかを観察していくことにしました。   その数日後、問題なく餌も食べるようになり、再発する様子もなく治療終了することができ、一安心!   現在も、浮き上がることなく、元気に予備水槽で過ごしています。 しかし、浮き上がってしまった原因が、肺にあったのか、消化管にあったのかは未解決のままです。 魚類の病気や治療法については、まだまだわかっていないことも多いため、このように治療に対しての経過をみて判断することもあります。 こうしたデータを蓄積して、よりよい治療をできるように努め、今後もしっかりと健康管理していきたいと思います!         (閲覧注意:魚の内臓の写真があります。) ちなみにですが、ハイギョの仲間であるプロトプテルス・エチオピクスが死亡したときに剖検したときの写真がこちらになります。 肺も消化管もお腹の中に長く分布しており、浮き上がっている部分が尾側でしたが、どちらの可能性も否定することができませんでした。  

カピバラのアグアについて
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カピバラのアグアについて

みなさま、こんにちは。獣医の小野です。 気温が高くなり、暑い夏がやってきました。熱中症に気を付けてお過ごしください。     今回は、カピバラのアグアについてのお話です。   アグアは2016年に当館にやってきた7歳のカピバラです。 カピバラの平均寿命は8~10年といわれており、高齢のカピバラになります。     アグアは約1年前に糞便の状態が悪くなり、軟らかい便を排泄するようになったと同時に体重が少しずつ落ちてきました。消化管の病気を疑い、整腸剤や抗生物質を投与して治療を試みましたが状態が改善しなかったため、より詳しく検査を行いました。   その結果、炎症性腸疾患という病気であることがわかりました。   炎症性腸疾患という病気はあまり聞きなれないかもしれません。 この病気の明らかな原因は特定されていませんが、遺伝や免疫システムの異常などが考えられています。炎症性腸疾患は、腸粘膜に対して、自分の免疫細胞が攻撃してしまい、炎症を起こす病気です。 (じつは、アグアと兄弟のパンタやラーゴも炎症性腸症を起因とする形質細胞腫という腫瘍によって死亡しています。)     現在、アグアは免疫システムを抑える薬剤を投与して治療を行っています。 この薬剤の影響でからだの一部で脱毛が認められ、また小さな傷でも治りが遅く、悪化しやすい状態になっています。 しかし、治療を中止すると、腸粘膜の状態が悪化し、栄養や水分を腸から吸収できなくなり、衰弱してしまいます。   そのため、薬剤の影響を最小限にするよう薬剤の量をアグアの状態に合わせて調整したり、傷が治りやすいように軟膏を塗ったり、脱毛が広がらないようにブラッシングを行ったりして対応しています。   また、最近の研究で健康なカピバラの糞便を移植することで症状が改善したという報告があり、そちらについても取り組んでいます。     なぜ、病気のカピバラを展示しているのかという疑問があるかもしれません。 カピバラは自然界では平均10頭の小さい群れをつくって行動しています。この群れになわばりのようなものが存在して行動範囲がかぶらないようになっています。   当館ではアグア以外に兄弟のリオも飼育しています。 アグアとリオは兄弟ですが、治療のため、別々に飼育した後に再び同居させると、けんかになってしまいます。最悪の場合は、命に関わることもあります。 このため、アグアをバックヤードへ移動せずに、リオと顔を合わせられる距離で飼育を続けています。   これからも、飼育スタッフと協力して、アグアの病気が快復するよう、最善をつくしていきます。アグアのことを温かく見守っていただけると嬉しいです。     Tweet  

目が白くなったホクリクサンショウウオ
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目が白くなったホクリクサンショウウオ

みなさま、こんにちは。獣医の小野です。 夏が終わり、もうすぐ紅葉の季節がやってきますね。     2年前のある日、飼育スタッフTさんに 飼育しているホクリクサンショウウオの中に、目が白い個体が複数いるとの相談を受けました。   実際に確認すると、目の表面である角膜という部分が白く濁っていることがわかりました。   ↓こんな感じ   目が白いといっても、様々な原因が考えられます。 白内障?細菌が感染している?寄生虫が感染している?ガンによるもの?…などなど。 目の検査を行い、調べていくと、『脂肪性角膜症』という病気であることがわかりました。     『脂肪性角膜症』とは、特に樹上種のカエルで認められる病気であり、目の角膜に脂質が沈着する病気です。 栄養過多や、繁殖に向けて貯めた脂肪を上手に消費できなかったために発症するのではないかと言われています。   長期間にわたって白くなっているということで、エサとして与えているコオロギが原因かもしれない!と思い、 まずは、コオロギに与えているエサを見直すことにしました。 何故かというと、コオロギはエサによって栄養価が変化すると言われているからです。 つまり、脂質が多く含まれているものを食べているコオロギは脂質が多くなるというわけです。     そこでまず、低脂質食で育てたコオロギを与えた個体と、これまで通りの育て方をしたコオロギを与えた個体で、角膜脂質症の経過を観察してみました。 しかし、大きな差は認められず。どうやら、コオロギに与えているエサを変更しても、病気は良くなりそうにありません。 そこで!脂質代謝に関係しているビタミンEをホクリクサンショウウオに与えてみることにしました。     すると、徐々に目の白く濁ったところが小さくなっていきます!!       予想通り、ビタミンEを与えることは治療法の1つになりそうなので ビタミンEを与えた個体と与えていない個体で比較実験を行い、本格的に治療効果について検証してみることにしました。     実験期間は2年に及びましたが、ビタミンEの治療効果を証明することができ、 この成果を先月につくばで開催された日本野生動物医学会にて、発表してきました。     発表内容について、ほかの動物園水族館の獣医師からたくさんの質問をもらいました。 これまで行われてきた治療法は、給餌制限(餌を減らすこと)だったため、病気は良くなるものの痩せてしまうことが多かったようです。 しかし、今回発表した治療法は痩せるという問題も解決でき、とても興味深い発表だったと言ってもらうことができました!     ただ、今回はホクリクサンショウウオのみで実験を行ったため、ほかの生き物については症状が良くなるか、まだわかりません。 今後、ほかの生き物で脂肪性角膜症が確認されたらビタミンEの効果を検証したいと思います!     Tweet

魚類闘病日記パート⑤
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魚類闘病日記パート⑤

みなさま、こんにちは。 今回はポリプテルス・デルヘジの治療についてです。   この魚は2階の「コンゴ川 下流の魚」水槽で展示されています。   さかのぼること4月のある日、水槽掃除のために潜水すると、体表の一部が赤くなったポリプテルス・デルヘジを発見しました。 すぐに取り上げて予備槽に移し、治療を開始することにしました。 まずは赤くなっている部分を採材して、検査を行いました。 その結果、どうやら、細菌によるもののようです。   そこで、抗生物質をエサに混ぜて与えることにしました。   しかし、食べてくれません…。 数日間、試してみましたが、やはり食べてくれません…。 そのため、投薬方法を筋肉注射に変えることにしました。   ポリプテルス・デルヘジはとても硬いウロコで体が覆われている魚です。 注射できるかな?と不安でしたが、ウロコとウロコのすき間を狙うとすっと針がささり、無事に注射することができました。     注射による投薬は、水槽から取り上げて保定して行うため、魚にとってはかなりのストレスになります。早くエサを食べてくれることを願いつつ、慎重に注射を続けること1週間…。 ついに!エサに興味を示すようになり、薬入りのエサを食べてくれました。   それからは、この方法で薬を投与しながら経過を観察しました。 はじめは、患部が少しずつ黒くなりました。 これは、もしかするとウロコが脱落するのではないかと思い、さらに数日間様子を見ると…。 ウロコはなくなりましたが、赤みはなく、炎症はしていないようでした。 その後、元気に泳ぐ姿が見られるようになりました。   ウロコの再生ができるだけスムーズに進むように、今度はエサにビタミン剤を混ぜて与えることにしました。   それから1か月…。 半分程度のウロコが再生したようです。 この写真からお分かりいただけるでしょうか?   今は、ウロコの回復具合に一喜一憂している私ですが、このデルヘジが展示水槽に戻り、ほかの魚たちに混ざって元気に泳ぐ日が来ることを願うばかりです。     Tweet

魚闘病日記パート④
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魚闘病日記パート④

みなさま、こんにちは。 今回は、3階に展示しているホトケドジョウが主役です。     1月某日、展示水槽内で右目近くにできものがあるホトケドジョウ(矢印)を発見しました。   これは腫瘍ではないかと考え、取り除くために外科手術を行うことにしました。   魚って外科手術できるの?と思われる方もいるかもしれませんが、できます! 私たち人間と同じように麻酔薬を使って行います。     過去に数回、体長50cm程度のナマズにできた腫瘍を取り除く手術は行ったことがあるのですが、それよりも小さい魚では経験はなく、少し不安でしたが、挑戦してみることにしました。     麻酔薬を少しずつ水槽にいれて、ホトケドジョウの様子をみていきます。 やはり、小さい魚なので薬の量も少しで効き始めていきます。 下の写真は、麻酔が完全に効いている状態です。決して、死んでいるわけではありません!   水槽から取り出してすぐに腫瘍と思われる部分をメスで切っていきます。 ここは時間との勝負で、焦らず丁寧に行っていきます。 ナマズで行ったときは、出血が多く止血に苦労した経験があるため、止血の準備を万全にして行いましたが、幸いにも出血はほとんどありませんでした。     再び、水槽に戻して、麻酔からの回復を待ちます。 この時が一番、緊張します。「戻ってこお~い、戻ってこお~い」と念じながら 待つこと30秒、元気に泳ぎ始めました。 一安心です。   取り除いた部分を顕微鏡で観察すると、腫瘍細胞が確認できました。予想通り、腫瘍でした!     術後の様子↓ 右目の前あたりの薄いピンク色をしているところが、腫瘍を取り除いたところです。     手術後は、異状がないかしばらくバックヤードにて飼育を行いました。 傷は少し痛々しく見えますが、エサも食べ始め、順調に回復していきました。 そして、術後20日目で再び展示水槽へ復帰させることができました!   展示水槽での様子↓   まだ、傷口は完全には塞がってはいませんが、元気に過ごしています。 ぜひ、水槽でこのホトケドジョウを探してみてくださいね。       Tweet

両生類闘病日記パート①
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両生類闘病日記パート①

みなさま、こんにちは! まだまだ寒い日が続きますが、体調にお気を付けてお過ごしくださいね。     さて、今回はクロサンショウウオについてのお話です。   11月のある日のことのです。 展示しているクロサンショウウオの1匹の様子がおかしいことに気付きました。 水槽から取り上げて、よく見てみると…     右前あし(黄色丸)皮膚がなくなり、筋肉が露出している状態になっていました。 原因は不明ですが、すぐに治療しなければいけない状態です! バックヤードに隔離して、皮膚の再生を促進するクリームを毎日塗っていくことにしました。     この治療を2週間続けていきましたが、傷は全然よくなりません…。 もしかすると、細菌による二次感染がおこっているのかと考え、抗生物質が入ったクリームに変更することにしました。     治療開始より1か月後…     傷が一回り小さくなりました!     さらに1か月後(治療開始より2か月後)…     傷の場所がわからなくなりました!よかった!     少し時間はかかりましたが、傷を治すことができました。   近々、展示水槽に復帰させる予定ですので 元気になったクロサンショウウオに会いに来てくださいね♪     Tweet

魚闘病日記パート③(ナイルパーチの眼の病気)
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魚闘病日記パート③(ナイルパーチの眼の病気)

みなさま、こんにちは。 だんだんと寒くなってきましたね。   今回は、2階にある『コンゴ川 下流の魚』水槽のナイルパーチについてのお話です。     9月の初めの頃のことです。 水槽にいるナイルパーチ2匹のうち、1匹の左眼が大きく突出し、一部白くなっていました。 ※拡大     この眼球が突出している状態は、『ポップアイ』とも呼ばれます。 ガスの過飽和、ウイルスや細菌、寄生虫および真菌のような病原体や腫瘍に関連して発生すると考えられている病気です。   眼の外縁が白く(緑矢印)、それを囲むように赤くなっている(黄矢印)という症状が片眼のみにあらわれたことから、全身の状態が悪かったわけではなく、水槽内の擬岩や流木などに接触したことにより眼に傷ができ、細菌に感染したのではないかと考えられました。   よって、抗生物質をエサに混ぜて与えることにしました。   水槽内で症状がでている魚はナイルパーチのみのため、捕獲して別の水槽に移動させて治療することが理想的ですが、移動によるストレスでエサが食べられなくなったり、新たに傷ができてしまったりする可能性があり、断念しました。   そこで、抗生物質が入った魚肉を15個用意して、水槽内にエサを投げ入れることにしました。ほかの魚もいるなかで、うまくナイルパーチに食べさせなければいけません。エサを投げ入れるスタッフと観覧側から様子を確認するスタッフの2人態勢で行い、ナイルパーチが1個でも食べてくれることを願い、給餌を行いました。   与えているエサはこちら↓   給餌の様子はこちら↓     残念ながら、1日目は失敗。2日目も失敗…。 しかし!3日目にもなると、スタッフ同士の連携がうまくいくようになり、投薬は成功。   投薬し続けてから4日目の様子↓ 眼の突出はなくなり、症状は少しずつ良くなってきました!!     投薬は1週間行い、投薬前よりきれいな状態になりました!よかった! まだ少し白いところが残っていますが、 眼の輝きを取り戻したナイルパーチの姿を見に遊びに来てくださいね♬     Tweet

赤外線サーモグラフィーの獣医医療への活用
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赤外線サーモグラフィーの獣医医療への活用

みなさん、こんにちは。 獣医の小野です。   今回は、赤外線サーモグラフィーを用いた検査についてのお話です。 赤外線サーモグラフィーとは温度が測定できる映像装置です。 撮影する対象物から放射される赤外線を検出し、その赤外線エネルギー量により 温度分布を測定し、色によってそれを表現します。 温度が高いところは赤く、温度が低いところは青くなります。 実際にカピバラを撮影すると、下の写真のようになります。   では、これをどのように獣医医療に利用するかといいますと みなさんが風邪を引いたときに熱がでるように動物たちも同じです。 細菌やウイルスなどの悪いものが体の中に侵入すると免疫が反応して その過程で熱が発生し、悪いところが周りと比較して温度が高くなる傾向があります。 その特性を利用して、動物たちを赤外線サーモグラフィーで観察し、悪い部分を特定します。     例えば、今回の症例はこちら。   カピバラのラーゴがある日、左前肢をかばって歩いているとの報告を受けました。 ラーゴの両肢を赤外線サーモグラフィーで確認すると   1つの指だけが黄色くなっているのがわかりますでしょうか。 ここで細菌感染が起こっていて、痛みが生じて、肢をかばう原因となっているようです。   そのため7日間、抗生物質と痛み止めを投薬した後、 再度、赤外線サーモグラフィーにて確認すると 周りとの温度差もなく、完治したことがわかりました。   このように、赤外線サーモグラフィーは、対象動物に直接触ることなく 温度がわかり、手で触っただけではわからない細かな温度変化も知ることができます。   動物たちは私たち人間のように『お腹が痛い』や『足が痛い』などと痛いところを教えてはくれません。私たちの五感に頼るだけでなく、この赤外線サーモグラフィーのような検査機器を使うことで、言葉が通じない動物たちの異変を少しでも早く気付くことができるようになればと考えています。   Tweet  

魚闘病日記パート②
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魚闘病日記パート②

みなさん、こんにちは! 前回の魚闘病日記パート①はもう読んでいただけましたでしょうか?!   今回は、パート②になります! ブログの冒頭について、他のスタッフから面白い案をもらいましたので今回からそれを採用していこうと思います! 物語風に想像しながらご覧くださいね。ではでは、どうぞ~       昨年の11月ある日のこと、一本の内線が入りました。   <<トゥルルル トゥルルル ガチャ>> 私:はい、獣医の小野です。   クニさん(飼育スタッフ):ちょっと、パカモンの皮膚が赤いねん、診てくれへん?   私:わかりました!今すぐ行きますね。       現場に駆け付けると、パカモンの背側の皮膚が赤くなっていました。(青色の丸で囲ったところ)   少し拡大しますと 赤いですね…     早速、原因を調べていきます。 滅菌された綿棒で赤くなっている部分をこすり、組織を採材します。 その組織をスライドグラスに擦りつけて、顕微鏡で観察します。   その結果、細菌が多く検出されたため、エサである魚の切り身に抗生物質の錠剤を入れて治療を始めていきました。     投薬開始3日後、皮膚の赤みがなくなりました!   その後も順調に回復していきました。 そして、1週間後、投薬が終了し、元のきれいな皮膚に戻りました!よかった!     その後のパカモンはといいますと… こちら! 水族館のエントランスにあるテーマ水槽で、バレンタインの展示として活躍してくれました。(2/14まで展示)   Tweet

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本日の開館時間

9:30-18:00

最終入館 17:00

世界淡水魚園水族館 アクア・トト ぎふ

〒501-6021 岐阜県各務原市川島笠田町1453

TEL 0586-89-8200 FAX 0586-89-8201

2回分の料金で何度でも楽しめる!

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