おもしろ飼育コラム

水辺の清掃活動in揖斐川
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水辺の清掃活動in揖斐川

3月13日に揖斐川河口の干潟やその周辺のヨシ原で清掃活動を行いました。   この場所は、私に「これを放置してはならぬ。ごみ拾いせねば…。」と思わせた場所です。干潟の規模は大きくないものの、季節により様々な生き物が出現する生物多様性の高い場所です。なのにごみだらけ!     当館スタッフだけでは人手が足りないこともあり、今回は近隣の水族館「シーライフ名古屋」の皆さまにお声がけし、一緒に清掃活動を行いました。     ごみは無限にあり、開始早々「途方もないな…」という気持ちになりました。多い場所では、手の届く範囲だけで35リットルのごみ袋がほぼいっぱいになってしまうほどでした。2、3歩進んでは新しいごみ袋を取りに行く、という工程を繰り返し、少しずつきれいになっていきました。   11人でごみを拾い、1時間ほどで乗用車3台分に載せられる限界量に達しました。     今回はここまで。予定していた清掃範囲の1/5程度しかできませんでしたが、実施した場所は、本当にきれいになりました。やればきれいになる。それがわかって前向きな気持ちになりました。     水族館に戻って仕分けをしたところ、70リットルのごみ袋が28個分。シーライフ名古屋さんが持ち帰った分と合わせておよそ3000リットルのごみを回収することができました。この、ごみの処分費はそれぞれの水族館の負担となります。     当館の売店Fishtankではこんなリストバンドを販売しています。   「Save the 淡水魚 ~水辺の宝を未来へつなごう~」と書かれており、現在開催中の企画展のテーマでもあります。いつか一緒に、あるいは別の場所でも、大勢の人たちと同じ気持ちで水辺の清掃活動をしたい!と思い作りました。売り上げの一部はこの「水辺の清掃活動」に充てられます。青色が大人サイズ、水色が子供サイズです。   今回拾いきれなかった揖斐川河口のごみは、5月頃にまた回収しに行こうと思っています。

岐阜県郡上市に伝わる、伝統漁法「うわな漁」
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岐阜県郡上市に伝わる、伝統漁法「うわな漁」

世界中にはさまざまな生き物が生息しています。人間はそれら生き物を捕まえるために生き物の特徴に合わせたさまざまな手法を取ってきました。 魚類に関しては、特に漁法と呼ばれます。漁法の中には、もうおこなう人がおらず、この世から消えてしまうもの、あるいは既に消えてしまったものもあることでしょう。   そんな中で、40年ほど前まで実施されていた、ウグイを獲る漁法「うわな漁」の実演が先日おこなわれました。 大変貴重な実演に呼んでいただけたので、どんな漁法なのか、学んできたことをこちらのコラムでご紹介しようと思います。     最初に、大まかにどんな漁法なのかを説明します。 ウグイは石の隙間に潜って越冬する習性があるため、晩秋にウグイが潜り込みやすい石組を作ります。これを「うわな掘り」と言います。そして真冬にその石組を崩し、中に潜り込んでいるウグイを漁獲する、というものです。これを「穴開け」と言います。     では、もう少し具体的に説明していきます。 まずは石組を設置する場所を決めます。川の中でも、浅く、流れのある場所が良いです。場所が決まったら河床を掘り下げます。今回は深さ約1m、幅は直径約2mの円状に掘り下げたようでした。そこへ人が抱えて運べる程度の石を積み重ねていきます。もともとの河床くらいまで石を積み重ねたら、その上に藁むしろを敷き、さらに石を載せます。   石組の少し上流に波よけを作ったら、設置作業は完了です。石組を図にするとこのような感じです。     今回は残念ながら、出水によって日にちがずれてしまい、私は設置の様子を見ることができませんでした…。またの機会を楽しみに待ちます。   設置が終了したら、冬が来てウグイが石組に入るのを待ちます。   1か月ほどが経ち、1月下旬。待ちに待った穴開けの日がやってきました。   まずは、藁むしろの上の重石を取り除きます。その後、掘った穴の上流側にリンゴ箱という箱を沈めます。リンゴ箱というのは下の写真のような箱のことを言います。   片側の金網に穴が開いたつくりになっており、一度魚が中に入ると、外には出にくいようになっています。また、川の流れに沿って箱を置くと、中を水が通り抜けるようになっています。   そして、リンゴ箱を中心にタテ簾を立てます。   この時、隙間ができないようにタテ簾と河床の隙間を砂利で埋めます。藁むしろを取り除き、穴の中の石を取り出していきます。   ある程度取り出したら、上流に作っておいた波よけを崩して、石組への水の流れを強めます。こうすることで、飛び出してきた魚が流れに逆らって泳ぎ、リンゴ箱に入りやすくなります。実際に魚がリンゴ箱に入る様子を撮影できたので、お見せします。   奥の穴から箱の中へと魚が入ってきているのがわかるでしょうか。 全ての石を取り除いた後、魚がタテ簾に沿ってリンゴ箱に入るのを待ちます。最後に仕掛けを撤去し、河床をならして、うわな漁は終了です。     今回の実演で漁獲されたウグイは6匹で、サイズも10cm前後の小型の個体でした。ウグイ以外には、オイカワ、カジカ大卵型、アカザといった魚が見られました。     今回実演していただいた方のお話では、40年ほど前は1回の漁で1000個体ものウグイが漁獲されたことがあった、とのことでした。今回漁獲された個体数が少なかった要因としては大きく2つの要因が考えられました。     1つ目は設置場所です。今回の実演では、河川工事の関係で、比較的流れの緩やかな環境に設置しました。大きなウグイは流れの速い環境にいることが多いために、緩やかな環境に設置した石組には大型のウグイが入らなかったのではないか、とのことでした。     2つ目に、以前に比べて魚の数が減っている、ということが挙げられました。見学に来られていた方も最近は魚がおらんからねぇと話されていました。     減少しているのはウグイのみではなく、さまざまな淡水魚が絶滅の危機に瀕しています。現在当館では企画展『Save the 淡水魚 ~未来へつなぐ水辺の宝~』を実施しています。その中で、淡水魚が今どのような状態にあるのか解説をおこなっています。ご興味のある方はぜひ一度見に来ていただけると幸いです。     話を戻してうわな漁ですが、また来年度も実施する予定だそうです。現地での見学も可能です。私もぜひもう一度見学し、たくさんのウグイが漁獲される様子を見たく思います。   最後までお読みいただき、ありがとうございました。また次のコラムでお会いしましょう!

高校生×中学生×動物園×水族館!イタセンパラがすむ木曽川を未来に!
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高校生×中学生×動物園×水族館!イタセンパラがすむ木曽川を未来に!

秋晴れとなった3連休。その初日に水辺の清掃活動~みんなの川を未来へ~を実施しました。今回は当館のスタッフだけではなく、羽島高校、大垣東高校、羽島中学校、日本モンキーセンター、(株)建設環境研究所の方々も活動に加わってくださいました。   場所は天然記念物イタセンパラの分布域でもある木曽川の下流域で行いました。 木曽川イタセンパラの保全に関係のある方や、地域の環境教育に興味を持つ方にお声がけしたところ、このような形で実施できることになりました。多くの方にお集まりいただき、開始前から感動でした。     清掃時間は1時間と短いものでしたが、藪の中に分け入ってごみを拾うなど、みなさま本当に熱心に取り組んでくださいました。   今回のごみで多かったのは、いつもながらのペットボトルに加えて、釣り道具、それと分別しにくくてどこに捨てたらよいかわかりにくい家庭ごみでした。   私を含めた3名は水の中に入り、そこでごみを回収したり、生き物を採集したりしました。 周辺にはどんな生き物がいるのか、お見せしたかったからです。     在来種は、モツゴ、コウライモロコ、イトモロコ、ヨシノボリ、モクズガニ。 それからイタセンパラが卵を産みつける二枚貝も。二枚貝を披露すると、「おぉ二枚貝だ!!」と高校生たちから歓声が上がりました。二枚貝に歓声があがるなんてうれしい。     そして、オオクチバス、ブルーギル、カダヤシ、カムルチーといった外来種もお見せしました。「ブルーギルはテレビでしか見たことがなかったから、本当にいるんだということが知れてうれしい」と言ってくださる生徒さんもいて、清掃活動に生き物観察を取り入れた甲斐があったなぁ。と私もうれしい気持ちになりました。     清掃活動はまだ始めたばかりです。これからもいろいろな場所をきれいにしに行きたいですし、「川原はごみ捨て場じゃないぞ」っていう思いをいろいろな方と共有できたらいいなと思っています。

DLT
  • 研究・調査

DLT

初めまして、4月に入社した霜鳥です。 早いもので入社から半年以上が経ち、すっかり肌寒い季節になりました。     さて、いきなりクイズですが、11月1日は何の日でしょう?   正解は、「計量記念日」です!   1993年の11月1日に、現行の計量法という法律が施行されたことから、経済産業省によって定められているそうです。     今日は水族館での「計量」のお話をお届けします。   今回のお話の主役となる生き物は、当館でもその大きさで圧倒的存在感を放つメコンオオナマズ! そのメコンオオナマズの全長(吻端から尾びれ先端までの長さ)測定について、ご紹介します。     どのような方法で測定しているかというと、DLT(Direct Linear Transformation)法という、ちょっと特殊な方法です。   2台のカメラを使ってメコンオオナマズを撮影し、その映像から、3次元座標におけるメコンオオナマズの吻端と尾びれの先端の位置を推定し、その距離を求めます。 う~ん、なんだか専門的で難しそうですね…。   そんなことしなくても、直接メジャーでも使って測ればいいじゃないか!と言われてしまいそうですが、実はそれ、水族館ではかなり難しいお話。 多くの魚は臆病で、人や見慣れないものが近づくと逃げます。 また、無理やり捕まえると驚いて暴れてしまうことがあります。 あの大きなメコンオオナマズが大暴れすると…、想像しただけで恐ろしいですね。 麻酔などを使う方法もリスクがあり、魚への負担を減らすためには避けたいところです。 DLT法を使うことで魚に直接触らずに済むので、生きている魚にとって優しい測定が可能になるのです。 当館では2016年にも同じ方法で計測を行い、当時一番大きい個体が169.2 cmでした。 果たして6年間でどれだけ成長したのでしょうか。     測定した日は2022年8月31日。 近畿大学農学部水産学科漁業生産システム研究室の皆さまに教わりながら、今回私も撮影と解析に挑戦してみました。     こちらが実際の撮影風景です。 2台のカメラを設置し、撮影スタート!(当館のカメラと近畿大学のカメラがあるので4台になっています。)   まずは3次元座標の基準となる一辺90 cmのキャリブレーションフレームを水槽内に沈めます。 ちなみに潜水しているのは当館の館長です。 キャリブレーションフレームの基準点(角にあるオレンジの丸)がすべてカメラに映るようにしたら引き揚げます。   あとはそのまま水槽内のメコンオオナマズを撮影するのみ。 あとから見返した際に分かりやすいよう、横切った個体の識別番号を示していきます。     撮影は終了し、ここからが解析。 苦手なパソコン作業です…。   まずはキャリブレーションフレームの画像を左右それぞれのカメラ映像から抜き出し、各基準点同士の実際の長さをあてはめ、補正を行います。 解析の精度を高めるために誤差をなるべく小さくするのですが、これがなかなか難しくて時間のかかる作業で、私は3時間ほど苦戦しました…。     この作業が済んだら、これを基準にメコンオオナマズの画像解析が出来るようになります。 メコンオオナマズが体をまっすぐにして泳いでいる瞬間を探し、1秒間の映像を30枚の画像に分けて抜き出します。 そして各画像の吻端と尾鰭の先端を指定していくと…。   出ました!結果は340 cm!!   …いやいや。そんなはずはない。いくら何でも成長しすぎだし、最大で3 m程度と言われているメコンオオナマズのそんなギネス級の記録……。   落ち着いて見返してみると、左右のカメラから抜き出した画像を解析ソフトに入れるときに、左と右を逆にして取り込んでいたようです。 まさかのヒューマンエラー。 今後カメラの左右は絶対に間違えないように、本体に「左」「右」を明記しておこう。と先輩と固く誓ったのでした。     そんなトラブルも乗り越えつつ、現在解析を進めています。 飼育作業の合間をぬっての慣れない作業ですので時間がかかっておりますが、詳しい結果が出たら皆さまにお伝えしたいと思います。 皆さまは当館のメコンオオナマズ、どれくらいの大きさがあると思いますか? ぜひ直接ご覧いただき、想像していただけたら嬉しいです。     Tweet

用水路にいた青いメダカ
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用水路にいた青いメダカ

みなさま こんにちは。 現在、3階の「用水路の生き物」水槽の隣で青いメダカを展示しています。     青いメダカはペット用の改良品種で、観賞魚売り場に行くと、青いメダカの他にも、白いメダカや赤いメダカ、黒いメダカなど、いろいろと売られています。 家に水槽を置いて、それらのメダカを飼ってながめるのは私も好きです。     でも、そんなメダカを野外の川で見つけた時は、ぞっとしました。   去る2021年11月、岐阜県内の、とある用水路で生き物観察をしようかな。と水に入ったとたん、水面にいるたくさんの青いメダカを見つけました。 背側が青白く光る特徴を持つ「幹之メダカ」もいました。   初めて行く場所だったので、何がいるかなぁ~とわくわくしていたのにこれです…。残念でなりませんでした。     ここは、野生の生き物たちがくらす場所。ペット用のメダカがいるべき場所ではありません。 きっと、飼っている人が、(このメダカはいらないな)と思って、この場所に捨てたんだと思います。ざっと50匹以上はいました。       もし、ここに野生のミナミメダカがいたら…   ペット用メダカと野生のメダカは容易に繁殖するので、子孫を残す可能性があります。そうなると、遺伝子が撹乱され、この地域固有の遺伝子をもつ野生のミナミメダカはいなくなってしまいます。一度失われてしまうと、もう元には戻せません。     これまで、野生のメダカは開発による生息地の消失や、農薬や生活排水による水質汚濁、そして、国外外来種のオオクチバスやブルーギルに捕食され、また、カダヤシにすみかを奪われるなどして、大幅に数が減っています。     そして、またここにきて、ペット用メダカによる遺伝子の攪乱というあらたな脅威にさらされています。     飼っているメダカが増えすぎて飼えなくなったとしても、野外の川に捨てるのは絶対にやめましょう   青いメダカを見つけたこの用水路は、近所の人曰く、小学生もよく来て魚捕りを楽しんでいく場所だそうです。小学生には、その地域で世代を重ねてきた本物の地元の魚だけを捕らせてあげたいと心から思います。 川にペット用のメダカがいるのが当たりまえ、なんて事態にならないよう、自分にできることが何かを考えた結果が、青いメダカを展示することでした。   展示しているのは、今年の8月に同じ用水路で捕まえた個体です。   去年に続き、今年も青いメダカがたくさんいました。   ペット用メダカを川に放したらなぜダメなのか、しっかりとパネルで解説したつもりです。 ぜひ読んでいただけたらなと思います。 Tweet

北海道で出会ったエゾハナカジカ
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北海道で出会ったエゾハナカジカ

去る5月下旬、研究者と協力して北海道へ生き物調査へ行って参りました。   調査場所は北海道東部、日程は4泊5日。   飛行機から降り立つと本州で見たことがない、広大な大地が広がっていました。   5月下旬でもまだまだ寒く、昼間でも上着を着て、夜間はネックウォーマー着用という気候…   そんな寒さの中、カヌーで移動したり、   潜って生き物を観察したりと いろいろ経験できました。     そして岐阜県ではみられない生き物もたくさん見られました。         そこで出会った生き物のうちの1種「エゾハナカジカ」     水族館で展示しているカジカ大卵型とカジカ小卵型に見た目は似ていますが、 このエゾハナカジカは国内では北海道のみに分布する種で、私は見るのも初めてでした。   「これはぜひ『釧路湿原の生き物』水槽のニューフェイスとして展示したい!」 というわけで少しだけ連れて帰ることにしました。   すぐに常設展示する予定でしたが、9月のテーマ水槽を考えているときに 「魚へんに秋で鰍(カジカ)」だし、カジカを展示しよう! というわけで常設デビューの前にテーマ水槽で皆さまに見ていただくことになりました。   いかがでしょうか?   毎日見やすいところにいてくれて良い感じです。     石のすきまから顔を出す感じや、 ちょっと見上げている感じもかわいらしいです。   今回のテーマ水槽は10月3日までです。 ぜひ見に来てくださいね。       Tweet

ワラゴ・ミクロポゴンの歯
  • アクア・トトの生き物
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ワラゴ・ミクロポゴンの歯

先日、メコン川エリアの水槽で展示していたワラゴ・ミクロポゴンが残念ながら死亡しました。 いつものように担当スタッフと獣医師が体長などの測定と、解剖をして病気の有無などを調べたあと、体験学習班スタッフに魚体が引き渡されました。 貴重なサンプルですので、耳石や歯を調べ、標本にすることにしました。   これがワラゴ・ミクロポゴンの上あごの歯です。 鋭い歯がたくさん密集していて、おろし金のようですね。ワラゴ・ミクロポゴンは魚食性で、大きな口で他の魚をバクリと食べるのですが、歯はすべて喉の方向に曲がっていて、くわえた獲物を逃がさない作りになっています。   いかにも痛そうな歯なので、おそるおそる触ってみたところ・・・あれ、意外と弾力があります。歯の向きにそってなでると、ゴムのような手触りです。 居合わせた他のスタッフにも触ってもらったところ、 「犬用のブラシみたい」とのこと。   これなら噛まれても大丈夫?と歯を逆なでしてみると、痛い痛い!!鋭い歯の先がガリガリとひっかかって結構痛いです。魚食性の魚の歯を甘く見てはいけませんでした。     生きている間は、なかなか歯を見ることはできませんが、こうして調べてみると意外な発見がたくさんあります。 またおもしろい観察ができましたら、このブログで皆様にもお伝えしますね。     Tweet

オンライン学会に参加してきました!
  • 研究・調査

オンライン学会に参加してきました!

みなさま、こんにちは!獣医の小野です。 秋を通り越したように急に寒くなりましたね。 先日「第14回アジア保全医学会・第27回日本野生動物医学会 2021年合同大会」が開催され、私はオンラインで参加してきました。   本大会は、One Healthの最前線で活躍されている研究者や獣医師の方々が最新の研究成果を発表し、議論する場にすることを目的としています。 One Healthとは、生態系と人と動物は互いに強く影響し合っているため、これら3つをひとつのまとまりとして捉えて、守っていく考え方のことです。   詳しくはこちら → ホームページ   野生動物や、水族館や動物園で飼育されている動物に対する獣医医療は、年々進化を続けており、治療法や予防法が確立されていなかった病気に対して、新たな解決策が研究されています。さらに野生動物に対する研究も進んでいます。   そのため、学会や研究会に参加して獣医医療に関する知識のアップデートをすることは、飼育動物の健康管理を行う上で、とても大切なことと言えます。   大会では新型コロナウイルス感染症に関する飼育動物への予防対策や、テーマになっているOne Healthに関連する発表が多い印象でした。   私は当館での事例として『カエル類で認められた抗酸菌症について』という内容で口頭発表を行いました。 抗酸菌症とは、細菌感染の病気です。発症してしまうと、今のところ有効な治療法がなく、最悪の場合は死に至ります。そのため、感染が起きないようにすることが肝心で、飼育環境の改善などさまざまな予防法を行い、発症個体をゼロにおさえられていることについて発表しました。   国際学会なので、発表はすべて英語で行いました。 発表資料ももちろん英語です。色々な人に資料を確認してもらい、発表時の原稿も前もって作成して、添削もしてもらいました。万全の準備をして本番に挑みましたが、やはり英語が得意でない私にとっては、とても緊張した発表となりました…。 それでも何とか、質疑応答まで終わり、やりきりました!よかった!   ↓オンライン参加の様子を少し…   研究成果を発表することで、自分にはなかった視点からの指摘や、同じ病気を研究している大学の先生方とのつながりができ、今後の研究の方針を定める上で参考となる情報をたくさん収集することができました。何か結果を出すことができれば、それを研究会や学会で発表していくことはとても大切であると改めて実感しました。   今は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、ほとんどの学会や研究会はオンライン開催となっています。   オンライン開催の利点はたくさんありますが、私個人としては、さまざまな機関に所属する人たちが直接集まって情報交換したり、討論したりしたいなあと思います。   Tweet <!– Tweet

カピバラの歯(後編)
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  • 研究・調査

カピバラの歯(後編)

こんにちは。 前編に引き続き、カピバラの歯についてのお話です。   次に、抜いた歯の形に注目してみてください。写真左がカピバラの前歯(切歯)、写真右が臼歯です。歯茎側を下にしてあります。   人間の歯と比較してみましょう。下の絵は左からカピバラの切歯、臼歯、人間の歯です。人間の歯のように根っこの先が尖っておらず平らになっています。   これは無根歯(常生歯)といって、固いものを噛むために歯が生涯伸び続けるためです。カピバラをはじめとした葉を主食とするげっ歯類ではすべての歯が無根歯です。一方で、穀物を主食とするネズミやラットでは切歯のみが無根歯です。     ペットなどで飼育されている無根歯をもつ動物(ウサギやハムスターなど)に柔らかいものを与えすぎると、歯が伸びすぎて嚙合わせが悪くなることがあります。 当館のカピバラにも、牧草を常に食べられるようにする、固いペレットをあげる、飼育スペースにかじり木を設置するなどの工夫を行っています。     最後に、咬合面(こうごうめん:歯と歯の噛み合わせの面)に注目してみましょう。これは上顎を裏返しにして撮った写真です。 葉を主食とするげっ歯類は、下顎を前後に動かして草をすりつぶします。そのため、咬合面は真っ平で、洗濯板のように横向きに溝が走っています。 上顎と下顎の接続部を見てみると、上顎にレールのような構造があります。このレールが下顎を前後にスライドする仕組みの一部になっています。 実際に動かしてみました。確かに、下顎がレールに沿って前後に移動できますね。(この写真も上顎と下顎が上下逆になっています。)   いかがでしたでしょうか。今度カピバラをご覧になるときは歯に注目してみてくださいね。 長い文章にお付き合いくださり、ありがとうございました。     Tweet

カピバラの歯(前編)
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カピバラの歯(前編)

こんにちは。今年4月に入社した、体験学習チームの松下です。   さて、先日、残念ながらカピバラのパンタが死亡しました。   死亡する直前まで下痢が激しく、消化管の疾病であることが予想され、当館の獣医師や担当スタッフが連日懸命にケアをしましたが力及びませんでした。   一般家庭のペットが亡くなったのであれば、人間と同様に火葬することが多いでしょう。しかし、ここは水族館。生き物の死を無駄にせず、死亡した個体から少しでも次の飼育や活動に結び付けることが私たちの使命と考えています。   体験学習チームではこの個体を引き取り、今後の教育資料として役立てられるべく標本を作製しました。この標本により分かったさまざまなことを2回に分けてご紹介します。         こちらがクリーニングされた頭骨の写真です。カピバラは哺乳綱げっ歯目に属し、世界最大のネズミといえます。ネズミである証拠に、大きな前歯(切歯)がこの写真からもお分かりになるかと思います。   次に歯全体を見てみましょう。これは、上顎の写真です。一見、大きな切歯と長い臼歯だけがあるように見えますが、歯をすべて顎から抜いてみると、臼歯もパーツに分かれていることが分かります。   カピバラの歯式は、I1/1 C0/0 P1/1 M3/3=20です。 歯式とは、それぞれの動物がもつ歯の種類と数を式で表したもののことです。Iは切歯、Cは犬歯、Pは前臼歯(小臼歯)、Mは後臼歯(大臼歯)のことで、分子は上顎、分母は下顎の片側の本数を示します。=でつながれた最後の数字が、歯全体の数になります。写真で見ると、切歯が1対、犬歯がなく、前臼歯が1対、後臼歯が3対あるのが分かります。   前臼歯をもっているのが、げっ歯目の中でも祖先的な形質を残したグループの特徴です。カピバラに近い仲間にモルモットやチンチラがおり、彼らも前臼歯を残しています。実験動物としてよく使われるマウスやラットは前臼歯を持っておらず、後臼歯3本のみです(I1/1 C0/0 P0/0 M3/3=16)。 ちなみに、人間の永久歯の歯式はI2/2 C1/1 P2/2 M3/3=32です(親知らず含む)。よかったら数えてみてくださいね。   長くなってしまったので、ここでいったん区切りたいと思います。後編もぜひお読みください。     Tweet

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本日の開館時間

9:30-18:00

最終入館 17:00

世界淡水魚園水族館 アクア・トト ぎふ

〒501-6021 岐阜県各務原市川島笠田町1453

TEL 0586-89-8200 FAX 0586-89-8201

2回分の料金で何度でも楽しめる!

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