今、水槽内では、アカハライモリの繁殖行動を見ることができます! 野外での繁殖期は春になってからですが、 当館の水槽は野外と比べて暖かいためか、毎年1月ごろから観察できます。 オスは繁殖期になると、このようなド派手な婚姻色が出てきます。 上から下まで紫で、とても私にはマネできないコーディネートです。 また、おしりのあたりがぷっくりふくれてきて、 よく見ると毛のようなものが見えます。 実はここからメスを誘う性フェロモンをだしているのです。 その名は「ソデフリン」 万葉集にある額田王が詠んだ 「茜指す紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」 が名前の由来となっています。 「紫野」は紫の染料のもととなる草が生えている場所、 「袖振る」は愛情を示すしぐさを意味します。この命名、本当に素敵ですね。 袖ではないですが、紫を召した幅広い尾をふります。動画でどうぞ。 オスはメスの行く手を遮り、後ろあしでメスの首付近をがっちりおさえて、 顔の前でしっぽをフリフリフリフリと振ります。 こういった繁殖行動は地域によって違いがあり、同じアカハライモリでも 他地域のオスとメスではうまく繁殖できない場合があることが実験的に確かめられています。 観察していてもメスがオスの求愛を受け入れることはめったになく、 そのまま無視して泳ぎだすことがほとんどです。 オスはそれでもめげずにメスにアピールします。 なんというか、このめげないオスの姿をみると、ついつい時間を忘れて応援してしまいます。 さて、実は最近、メスも性フェロモンをだしていて、 オスをその気にさせていることが発見され、昨年その研究論文が公開されました。 その名は「アイモリン」 このアイモリンの名の由来もまた素敵です。 額田王の詠んだ歌は大海人皇子に向けたもので、大海人皇子は次のような歌を返しました。 「紫のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに我恋ひめやも」 この「妹(いも)」は恋人や妻を意味し、オスのソデフリンにちなんでつけられたそうです。 寒い日が続きますが、アカハライモリは熱い情熱的な毎日を過ごしています。 ぜひじっくり見に来てください。 (今の時期、水族館は比較的お客様が少ないのでゆっくり観察できますよ。コソッ) Tweet