みなさまこんにちは。展示飼育部の佐藤です。 今日、紹介するメコン川の魚はコイ科で最も大きくなるパーカーホーです。 その大きさは最大で全長3mになるといわれ、そんな魚がメコン川に泳いでいると思うと、ちょっと怖くなってしまう程の大きさです。 パーカーホーはメコン川が流れるカンボジアで国魚に指定され、国民の誰もがその名を知っている魚です。しかし、実際に実物を見た事のある国民はそれほど多くないと思われます。 なぜならば、上の写真のように大人一人では抱えきれない程大きなパーカーホーは、近年メコン川流域で起きている様々な自然環境の変化によって激減しているからです。 私がカンボジアで魚調査を始めた2000年頃には、すでに生息数が減っている種になっていましたが、それでも時々、魚市場でびっくりするような大きさのパーカーホーに出会う機会がありました。 それ以降、年々その姿を見かける機会も減り、2010年以降は20~30㎝程の幼魚の姿を見つけるだけでも幸運といって良いくらい激減してしまいました。 また、パーカーホーはメコン川本流のような大きな河川やそこにつながる湖などに生息しています。漁師さんの船に乗った際、定置網漁や刺し網漁を手伝いながら調査をしていると、小さなパーカーホーを何度か見る機会がありましたが、決して狙って採れる魚ではありませんでした。 ちなみに、上の写真の様に魚市場で売られる小さいパーカーホーはすべて生鮮魚として誰かに買われ、料理されて食べられてしまいます。私も漁師さんの家で一度だけ食べましたが、他のコイ科魚類と比べると多少美味しいかな?という印象のお味でした! 現在、カンボジアでは大きなパーカーホーが漁で採れた時には、水産局職員が記録した後、放流しているそうです。パーカーホーは大きく成長しないと産卵をしない種であるため、小さい幼魚の保全はもちろんですが、大きな個体をしっかりと守ることはとても大切な対策の一つです。 大きく成長すると、魚体の1/3が頭部といわれるくらい大きな頭をもつパーカーホー! アンコールワット寺院の壁画に1個体だけ描かれているのを見つけました。 (壁画の中の魚が見やすいように明暗をつけた加工をしています) この壁画からもアンコール王朝時代には全長3mのパーカーホーがメコン川に泳いでいた姿が想像できます。私も当館の「メコン川中流の魚」水槽で元気に泳ぐパーカーホーを眺めながら、メコン川の自然環境の回復を願うと共に、いつか3mのパーカーホーに出会う事を夢見ています。 最後までお読みいただきありがとうございました。 それではまた!