こんにちは。 3階「上流の生き物」エリアでアジメドジョウ幼魚の展示をはじめました。 まだ全長が2cmにも満たない、ちびっこなアジメドジョウです。 体形は成魚に近いものがありますが、アジメドジョウの特徴でもある複雑な虫食い模様にはまだまだほど遠い模様をしています。 さて、このちびっこたち、この春に当館で産まれた個体です。 アジメドジョウの繁殖に取り組むようになったのは3年ほど前からで、 2022年春に失敗。2023年の春も失敗。 3度目となった今年の春、ようやく繁殖させることができました。 アジメドジョウは、川底のさらにその奥深くの地下伏流水に潜り込んで冬を越し、潜ったその場所で春ごろに産卵すると考えられています。観察や調査が困難なことから、産卵行動や孵化した仔稚魚がどのように過ごしているのかは明らかになっていません。 そこで繁殖用水槽は、「観察しやすい場所で産ませてみたい」と考え、図のような平面的な構造にしました。 卵を見つけたのは3月17日で、卵の多くは石と石の間にありました。 見つけた時には下の写真のように、すでに発生が進んでいましたので、産んだのは3月15日か16日だと思われます。 それから2日後の3月19日 ↓ さらに3日後の3月22日 ↓ そして、3月23日に孵化がはじまりました。 大きな卵黄があるせいか仰向けで横たわっています。 こんな未熟な状態で産まれてきて、無防備に横たわっているだけって…。 孵化から2週間はこの横たわっている状態が続きました。 普通に考えたら、すぐにほかの生き物に食べられそうです。 でも、そこはさすが地下伏流水。おそらくほとんど天敵がいないんでしょう。(わたしの想像です) 4月5日 ↓ 4月12日 ↓ 4月21日 ↓ このような感じで育ってきました。 孵化からここまでは、なんと卵黄の栄養だけで育ちます。 他のドジョウの仲間、例えば当館で展示しているトウカイコガタスジシマドジョウやニシシマドジョウでは、孵化後2~3日もするとエサが必要になることを思えば、アジメドジョウの仔稚魚期が、どれだけユニークであるか、おわかりいただけるのではないでしょうか。 私自身も、(そういうものであるらしい)ということを知ってはいましたが、初めて観察することができて、地下伏流水という環境はよっぽど安全な場所でありカンガルーのお腹の袋みたいなものなんだな。という感想を得ることができました。 アジメドジョウの繁殖は全国の水族館で初!となります。 元気に育っているちびっこたちを、たくさんの方に見ていただけるとうれしいです。