- 企画展・特別展示
マムシを探せ!(企画展裏話①)
- 松下
みなさまこんにちは。
助手です。※企画展「毒の館へようこそ~博士と学ぶ毒生物~」参照
去る6月初頭。私はとても焦っていました。
というのも、1か月以内に、ニホンマムシとヤマカガシをどうしても捕まえなければならなかったからです。
7月から始まる企画展では、岐阜県に生息する毒蛇「ニホンマムシ」「ヤマカガシ」を展示したいと考えていました。しかし、両種は人に危害を加えるおそれのある特定動物に指定されています。飼育するには、安全上の基準を満たしたケースを用意したうえで、県から許可を得る必要があります。
その許可が下りたのが、6月初頭のこと。つまり、展示が開始される7月までの約1か月間で、両種を捕獲しなければならなかったのです。
最初は、水族館の近くを中心に、何度か夜の森を探し回りました。このときは、カブトムシ・クワガタムシ展示の担当者ら数名と一緒に行っていました。
(「夏はやっぱりカブトムシ!クワガタムシ!」も8月31日(日)まで開催中です。こちらもよろしくお願いします。)
「見つけました!」
時おりそんな声が上がるのですが、見つかるのはコクワガタばかり。企画展担当の私は、歯ぎしりしながらも成果ゼロの日々が続きました。
あまりにも心配になってしまい、上司(執事)に相談したこともありました。
「マムシとヤマカガシが見つからなくて、このままじゃ展示できないかもしれません……」
深刻な私とは対照的に、上司はまったく動じません。
「なんとかなるやろ。そんなことより、ほかの準備をしっかりしいや!」
そんなある日、私は勝負をかけることにしました。天気は昼ごろから小雨。気温も高め。これは、爬虫両生類たちが活発になる条件がそろっています。きっと今夜は、山の林道にカエルがたくさん出てくるはず。つまり、それを狙うニホンマムシも出るはず!
急遽メンバーをかき集め、その晩に乗り合わせて山に向かいました。
夜、雨がぱらつく林道に到着し、車を降りて直後――数歩も進まないうちに、先輩が叫びました。
「ヘビがいるよ~!」
一同に緊張が走ります。早鐘を打つような心臓を抑えながら、先輩のもとにかけつけると、そこにいたのは……。
「タカチホだー!!」
そこにいたのは、七色に反射するウロコをもつ、美しいタカチホヘビでした。ミミズを食べるため、こんなジメジメした夜に出てくるのですが、出会える機会の少ない種です。
すごい……けど、今じゃない!
その後もしばらく粘ったものの、結局この日は成果なしで解散となりました。
深夜。後輩を家に送り届けたあと、コンビニに寄ったところで、先ほどの先輩から連絡が入りました。
「あの後、一人で田んぼを探してたんだけど、見つけたよ ^^b」
ニホンマムシを展示できるという安堵と、遅くまで探し続けてくれていた先輩の優しさに、私はその場にへなへなと座り込んでしまいました。
ありがとう、ありがとう……。
その数日後。今度は上司から連絡が入りました。
「ヤマカガシとれたで。ほら、なんとかなったやろ」
……こんなにあっさり、なんとかなるんかい! 結局、私はずっと一人で空回りしていただけでした。
先輩と上司の手厚いサポートのおかげで、展示にはニホンマムシとヤマカガシの両種がしっかりと並んでいます。ぜひ、会いに来てください。
※ニホンマムシやヤマカガシの飼養または保管のためには許可が必要です。また、捕獲には大変危険が伴います。絶対にまねしないようにしてください。