目からウロコの「ペリソーダス・ミクロレピス」~「アフリカ進化の湖」日記 Vol.2~
2015.07.30 (木)
数ある麺類というカテゴリーの中で、
種分化的に独自の発展を遂げてきたラーメンという食べ物。
そして各地に根差し進化してきた、まさに適応放散的なご当地ラーメン、
そして今なお進化の途中であり続ける。
ラーメン、それはまさにシクリッド的ではありませんか・・・。
自分で書いていて嫌になりますが、
前回の田上氏のくだりを受けて、こんな出だしに。
ラーメンの進化に興味を示し、魚の変化に心を配る波多野です。
特別企画展「アフリカ 進化の湖」が始まって、1週間が経ちました。
すでに多くのお客さまにご覧いただき、ありがとうございます。
さて今回ご紹介するのは、
「Perissodus microlepis ペリソーダス・ミクロレピス」(以下 P.ミクロレピス)
というシクリッドです。
元々は、富山大学の竹内勇一先生からの共同研究の申し出があり、 当館で去年の4月から飼育を開始した魚です。 そのころは、展示して皆さまにご紹介できるようになるとは 思ってもいなかったので、感慨深いですね。 そしてこの魚、おもしろいのです。 何がおもしろいかと言いますと、 この魚は、なんとウロコを食べて生活をしているのです! ウロコですよ、ウ・ロ・コ。 詳しく言いますと、他の魚のウロコを口ではぎ取って食べているのです。 しかもほぼウロコのみを食べて生活しているという変わりもの。 そのため「鱗食魚」と呼ばれたりもします。 ウロコは元々、 ハイドロキシアパタイト(リン酸カルシウム)とコラーゲン繊維(タンパク質) が主成分であり、 消化さえできれば良質な餌となるのです。 まさに生息環境をめぐる競争の中で、 他の魚にはない特徴を獲得して、生き延びてきたのですね。 さらに、このP. ミクロレピスには左右の利きがあるのです。
私たちにも、右利きや左利きといった、利き手や利き足がありますよね。 このP. ミクロレピス、ウロコを剥ぎ取るのに、 体の右側からアタックするもの(右利き)と 左側からアタッタクするもの(左利き)がおり、 アタックをする方向つまり「利き」で口の傾きが異なってくるのです。 これは顎の発達具合にも関係しており、 捕食行動と頭部形態が密接に関係しているようです。
まさにスゴワザ。 スゴ過ぎますこのP. ミクロレピス。 このP. ミクロレピスをモデルとしたシクッリッド帽子も ちゃんと口が曲がっているのにはこんな訳があるのです。
さらにさらに、このP. ミクロレピスは一般的に流通しているような魚ではなく、 ほとんど日本でお目にかかることはないと思います。 だって他の魚のウロコを食べてしまうので、混泳できないですし、 同種間でも激しく争う気性の荒さ。 そんなユニークで貴重なこのP. ミクロレピスが、当館でご覧いただけます! さらにさらにさらに、ちょうど去年の7月に工夫を凝らして繁殖に成功し、 稚魚を得ることができました。
稚魚を保護する親
稚魚 竹内先生は、 生物の持つ左右性を行動科学や神経行動学的に研究をされており、 このP. ミクロレピスをモデルにその解明に努められています。 共同研究というとおこがましいのですが、 水族館でもその一助を担えればと思っています。 そして、このP. ミクロレピスのもつ素晴らしさやおもしろさ、 これまでに分かった知見を多くの方々に伝えていくのも、 当館が担える仕事の一つではないでしょうか。 今回は、特別企画展を通して、P. ミクロレピスを紹介させていただきました。 シクリッドの多様性すごいですね、本当に。 こんなおもしろい魚、いつ見られるの? 今だけでしょ! リレーブログ、次は 魚卵と魚糞をこよなく愛す、少し偏った感性をお持ちの須田さんです!