おもしろ飼育コラム

すくすく水草成長中 Part 1
  • アクア・トトの生き物

すくすく水草成長中 Part 1

みなさまこんにちは。山下です。   最近の山下は少し水草にハマってきています。 やはり魚をはじめとした、当館で飼育している多くの生き物は、いい感じの水槽レイアウトがあってこそ、その魅力が引き立つと考えます。そのいい感じのレイアウトに欠かせないのが水草だと思います。 これまで当館の水草はけっこう種数が少なく、同じようなものばかりだなぁ、と感じることが多々ありました。そこで、新たに育てられる水草はないかと試行錯誤しているところです。     すくすく水草コラムでは、今のところいい感じに育っている水草をご紹介したく思います。山下、本当に水草初心者です。新規水草に挑戦するためにたびたび勉強しております。学んだことをコラムに備忘録かのように書いていこうかと思いますので、果たしてPart何までいくのか、ご期待ください。     記念すべきPart1の水草はこちら! トチカガミです。秋ごろに会社の先輩が見つけてきてくださったものを、暖かくなってきたので展示に出してみました。   トチカガミはおもにため池や水路などで見られる水草です。浮葉植物といって、地面に根を張ることなく、水面に浮かぶタイプの水草です。葉っぱの裏側には浮嚢というふくらみがあります。 こんな感じです。この浮嚢、よく見ると空気が入った小さな部屋のようなものがいくつもあるような構造になっています。これは水面に浮くわけですね。試しに水中に葉を沈めてみると、一瞬で浮かび上がってきました。   図鑑を読んでみると、どうも葉が多くなりすぎると、空気中へと葉を伸ばし始めるそうです。空気中に出た葉では浮嚢は無駄な構造になるのか、あまり見られなくなるそうです。環境に合わせて変化する葉、面白いですね。     さてそんなトチカガミ、水に浮かべておくと、あれよあれよという間に大きくなっていきます。走出枝という茎のようなものが横へ横へと広がり、途中にできる節から、新たな葉が出てきます。 こちらの写真は新たな葉が出てくる様子を撮影したものです。生命の息吹を感じられてとても良いですね。     では実際にどれくらい成長しているのか、水槽に水草を入れたばかりの頃の写真と、現在の水槽の写真を比べてみましょう。 入れたばかりの頃の様子はこちら。 ちょっと寂しい感じがしますね。頑張って増えてくれ~と思いながら控えめに投入しました。     そして現在はこちら。 かなり葉が増えています!素晴らしい成長ですね。悪くなってきた葉をじゃんじゃん剪定しながらもこの状態です。次々と新しい葉が出てきます。     さらに図鑑を読んでみると、気になる記述がありました。根は根毛が発達するそうです。水槽に入れたトチカガミの根を見てみると… 確かにかなり発達しています!もうフッサフサです。可愛いですね。     水草、細かく見ていくとそれぞれに興味深い特徴があって楽しいです。そんな中で今私が待っているのは、トチカガミの花を見ることです。トチカガミの花期は8~10月だそうです。花が咲いたらSNSに写真をアップしようと思います。みなさまもSNSを楽しみにお待ちください。もちろん当館に実際に足を運んでいただき、トチカガミの成長を一緒に見守っていただけるとより嬉しく思います。   現在トチカガミは里山の生き物水槽でのみ、展示しております。今後も水槽内でどのような成長を見せてくれるのかを楽しみにしながら、日々を過ごしていきたいと思います。   最後までお読みいただき、ありがとうございました。 また次のコラムでお会いしましょう!

プレアクア・スクール
  • イベント

プレアクア・スクール

5月に未就学時児向け学習プログラム プレアクア・スクール「草花あそび」を開催しました。 身近な草花について五感を使った遊びで体験します。     タンポポの種を風に乗って飛ばそう! お決まりかもしれませんが夢中になります。 ※私も吹き飛ばしました   その後はタンポポの茎を使ったシャボン玉飛ばしや、色々な葉っぱでの草笛体験も行いました。     次は、様々な押し花と、花や葉から抽出した自然の絵の具を使った作品づくり。     そのほかにも葉や花にいる虫たちも観察して植物と虫との繋がりも少し勉強しました。     私は初めて運営する内容のプログラムで不安でしたが、あっという間に時間は過ぎてしまい足りないくらいでした。 一緒になって夢中になり幼少期の自分を思い出しました。   ひとつの場所に留まってじっくりと腰を据えてみると、草花だけでこんなにも学びがあるのだと実感しました。   参加者が家に帰ってからもお家の方々と自然に触れ、遊び学ぶきっかけ作りとしてこれからもサポートしていきたいです。 本当にありがとうございました。

夏休みを前に!
  • 企画展・特別展示

夏休みを前に!

こんにちは。体験学習班の大島です。   ただいま梅雨の真っただ中ということで、このところ雨の日が続いていますね。そして梅雨が明ければ、夏がやってきます。 夏といえば、カブトムシとクワガタムシっ! ということで、6月21日から「夏はやっぱりカブトムシ!クワガタムシ!」を開催します。   今、3階では展示準備を進めていますよ。 その様子を一足早くお伝えしますと、こんな感じです。 水槽の設置に、ちょっとアレンジを加えてみました   国産カブトムシ、クワガタムシ用の展示ケースは手作りです       展示種はといいますと… 金色のボディをもつ大迫力のあのカブトムシや   アゴの曲線美がたまらないあのクワガタムシなど     時期的に早いのか国産のカブトムシ、クワガタムシの姿をまだ見ていません…。 国産種については、これから少しずつ数を増やしていく予定です。 夏休みにはたくさん展示できるといいな~と願っております。     また、この展示の開催にちなんで、クルミの殻を材料にした「カブトムシのマグネットを作ろう!」も企画しています。 これまでの当館のワークショップに比べると、少し難易度高めです(汗) 詳しくは、ホームページなどでお知らせします。     楽しみにお待ちくださいね!   さ、設営、設営…。

クロベンケイガニを育てる
  • アクア・トトの生き物

クロベンケイガニを育てる

こんにちは。 今回はクロベンケイガニの繁殖のおはなしです。   まず、クロベンケイガニとはこんなカニ。紫色のはさみ脚が特徴です。   川の下流から河口で見られ、岸辺の土手に穴を掘ってくらしています。   当館では「下流の生き物水槽」で展示しています。 隣の「河口の生き物」水槽にいるハマガニとアシハラガニは、去年と一昨年に繁殖できたので、今年はぜひとも下流の生き物水槽のクロベンケイガニ、ベンケイガニ、アカテガニのどれかの繁殖を成功させたいと思っていました。     5月3日、予備槽から母ガニを、安全に幼生を放出できる場所へ移動させました。     その2日後の5月5日に無数のゾエア幼生が産まれました。     ゾエアは海中でプランクトン生活を送りながら、さらに小さな動物プランクトンを食べます。     ゾエア期に4回脱皮をして、その4回目の脱皮でメガロバ幼生に、さらにもう一回脱皮をしてカニの姿になります。   ゾエアⅠ期→ゾエアⅡ期→ゾエアⅢ期→ゾエアⅣ期→メガロパ幼生→稚ガニ   という具合。     孵化から13日後にはメガロパに、 それから8日後にはみごとに稚ガニになりました。     甲長1mmちょっと。すごく小さくてゴマみたいですが、ちゃんとカニの姿をしています。       さて、幼生を放出した母ガニはというと…。 なんと!幼生の放出から数日後にはまたお腹が膨らんでいて卵を抱えていました。 オスがいないのにびっくりです。     クロベンケイガニやその近縁のカニの場合、交尾をしてオスの精子をメスが体内に貯めておき、それを産卵のとき(お腹に卵を抱くとき)に使って受精させるのですが、今回のように2度目の産卵にも、その貯めておいた精子が使えるということは知りませんでした。     クロベンケイガニは珍しいカニではありません。川の下流や河口に行けば必ずといっていいほど姿を見ることができる身近なカニで、これまで長い間当館で飼育していたカニでもあります。それでも、まだまだわたしが知らないことにあふれていて、改めて生き物の偉大さを感じました。     今回育った稚ガニたちはおそらく2年後ぐらいに展示水槽へデビューできる大きさになるかと。それまで大切に育てていきます。    

子育て応援企画『おさかな、いこう♪』がはじまります
  • イベント

子育て応援企画『おさかな、いこう♪』がはじまります

2025年6月10日(火)から、子育て応援企画『おさかな、いこう♪』がはじまります。 毎年2~3月の寒い時期と、6~7月の梅雨時期に開催していて、今回が第6弾となります。     そもそも… 当館は公園の一角に位置することもあり、平日には1~3歳くらいの小さなお子様と親子で遊びに来てくださるお客様を多く見かけます。   水族館のイベントは休日が中心です。平日に「なにか楽しんでいただくことはできないかな」、「気軽に何度でもお越しいただけないかな」そんな思いからこの企画はうまれました。     さて、第6弾となる子育て応援企画『おさかな、いこう♪』。 イベントの内容はこちらのページでご覧ください。   このコラムは、前回2月にご紹介した内容と重複する部分もありますが、初めて水族館にお越しいただく方に向けて、少しだけ役立てば良いなという情報をご紹介します。担当者の私見ですのであしからず…。   ベビーカーで行けるの? 館内はエレベーターで4階まで上がり、3階、2階、1階へはすべてスロープで降りる構造になっています。 4階、2階の一部を除き、ほとんどの床はカーペット敷きになっているので、ベビーカーでもガタガタ感はありません。 歩くことができるお子様には、格好のお散歩スポットです。 ちなみに、水族館の入り口から最も近い駐車場は、一般道の中央駐車場です。     こどものトイレやオムツ替えは? 1階のミュージアムショップ横(入館前)、館内1階(カピバラの近く)、館内2階(メコン川淡水環境研究所)にトイレがあり、男女とも各トイレにオムツ替えの台を設置しています。 また同じ場所に多目的トイレもあり、こちらにも設置しています。 4階~3階にはトイレがありませんので、オムツがパンパンかも?という場合は、入館前にミュージアムショップ横のトイレをご利用ください。   こども用の便座シートは、各多目的トイレに設置しています。     こども用のトイレは、館内1階(カピバラの近く)の女性用トイレ内に2か所あります。   大人がトイレに行くときは? 各所のトイレの個室に、男女とも各1部屋ベビーキープを設置しています。 たくさんの個室が並んでいる場合は、一番手前の個室をご確認ください。 個室内は広くないため、ベビーカーの持ち込みは難しいと思います。     授乳室は? 1階のミュージアムショップ横に授乳室があります。女性のみがご利用いただけるお部屋になっており、部屋内はカーテンにより2ブースに仕切られています。 あまり広くないので、大型のベビーカーの持ち込みは難しいかもしれません。 お湯の設置はありませんので、通路を挟んだレストランでお声がけください。 尚、こちらが使用中の場合は、公園内の授乳室もご利用ください。 水族館の目の前にある観覧車の下、岐阜おみやげ川島店店内、ひだまりホール、自然発見館に設置されています。     ベビーカーのレンタルは? 7か月~2歳のお子様用のベビーカーを無料で貸し出し可能です。ただし数に限りがありますので、いつも乗るお子様なら持参いただく方がおすすめです。     雨が心配なこの時期。「おさかな、いこう♪」とお出かけしてみてはいかがでしょうか。 それでは、水族館でお待ちしています!  

いきものそっくり大変身!
  • 企画展・特別展示

いきものそっくり大変身!

みなさまこんにちは。 4月19日から始まった企画展「そっくりないきもの」も早いもので折り返し地点を迎えます。 今回は、企画展連動イベントとして、参加者自身が様々な生き物そっくりになっていただく、先日実施した生き物の着ぐるみ体験イベントの様子を少しですが紹介したいと思います。   まずは、この着ぐるみを見てください。   これはすべて手作りの一点物です。 「すごくないですか!?」 初めて見た時はそのクオリティーに驚きました。 私にはこんなすごいものを作ることはできませんので、今回は福島県にあるアクアマリンいなわしろカワセミ水族館さまから特別にお借りしてイベントを行うことができました。 この場を借りてお礼申し上げます。 どれも生き物を再現する精度が高くて、細かなところまでこだわりが詰まっています。スタッフで告知用の写真を撮るときも思わず時間を忘れてはしゃいでしまいました。     私自身着ぐるみ体験のイベントを行うのが初めてだったので、準備や当日の流れなどに不安な部分もありましたが、実際に体験された方の楽しそうな様子を見てほっとしました。     貴重な着ぐるみという事もあり、いつ来ても体験できるわけではないのが心苦しいですが、今後は6月14日(土)と7月5日(土)の11:00-12:30に予定しています。 有料(1着100円)イベントにはなりますが、気になる方はこの機会にぜひアクア・トト ぎふに遊びに来てくださいね。   イベントについて詳しくはこちら

そっくりないきもの展 見どころその3
  • 企画展・特別展示

そっくりないきもの展 見どころその3

みなさまこんにちは。 企画展「そっくりないきもの」も、あっという間に開始からひと月がたちました。 過去の飼育コラムで紹介した見どころに続いて、今回は海でみられるそっくりないきものたちを紹介します。     まずは、こちらの写真をご覧ください。   水面近くで横たわっているのはマツダイという魚です。幼魚のうちは海の表層を漂う枯れ葉や、ホンダワラなどの流れ藻に紛れて生活しています。 行動が面白いのでぜひ紹介したい種でしたが、なかなか入手が出来ずに展示できないかも…となかばあきらめていたところ、伊勢シーパラダイスさまよりお借りすることができて展示することができました。 展示ではごはんの時間以外は横たわっているので、見るたびにちゃんと生きているのか不安になります。     あとは、石のようにじっと動かずに獲物を待ち伏せするオニダルマオコゼ、体の一部を使って小魚をおびきよせるイロカエルアンコウもいます。     海には毒を持つ危険な生き物にそっくりないきものもいます。現在は有毒のシマキンチャクフグにそっくりなノコギリハギと、毒のトゲを持つミナミゴンズイにそっくりなコンビクトブレニーを展示しています。   このミナミゴンズイにはなかなか苦戦しました。ゴンズイ玉と呼ばれる群れを作るくらいの全長5㎝ほどの個体を飼育していますが、以前飼育した先輩からは「とにかくごはんはしっかりあげること!!」と聞かされていました。他の魚たちよりも回数を多く給餌して対応していましたが、それでもやせる個体がでてきて「これはマズイ…」と回数をさらに増やし、他の魚たちのごはんとして使用している冷凍アユが卵を持っていた場合にはそれをあげたりして、なんとか展示を維持することができています。   そんなミナミゴンズイたちの展示も6月中に別の生き物に更新しようかと考えています。コンビクトブレニーがミナミゴンズイに似ているのは幼魚の間だけで、成長して模様が変化してきたので、そろそろ選手交代です。どんな魚か気になる方はお早めにお越しくださいね。

あの有名なカエルが…!?
  • 日本の両生類

あの有名なカエルが…!?

みなさまこんにちは。展示飼育部の山下です。 今は2025年5月です。2025!?時が進むのが早すぎます。体感2024年の5月です。入社してはや1年が経過したのですね…。     さて気を取り直して2025年5月。暖かな日が増え、雨が降るとカエルの鳴く声が聞こえてくる季節になりました。みなさま、カエルについては昨年12月にとあるトピックがあったのをご存じでしょうか。実はみなさんもよくご存じの生き物が2種類に分けられたので、ご紹介しようと思います。その生き物とはこちら! Dryophytes japonicus ニホンアマガエルです!     これまで、日本全国に広くニホンアマガエルが分布するとされていましたが、実はニホンアマガエルという種類は遺伝的に異なる2集団に分けられる、ということがわかっていました。 そして先日、愛知教育大と京都大学の研究グループにより、ニホンアマガエルとは異なる集団がDryophytes leopardus 新標準和名ヒガシニホンアマガエルとして新種記載されました。     ニホンアマガエルは近畿地方の辺りを境にして、日本の南西部と韓国などに分布し、ヒガシニホンアマガエルは日本の北東部とサハリンなどに分布するそうです。岐阜の個体はニホンアマガエルではなく、ヒガシニホンアマガエルの集団に含まれることになります。当館の種名板も今回の記載を受けて更新しました。   「なんで岐阜が含まれる集団の名前が変わったんだ!岐阜が含まれる集団はニホンアマガエルのままで、南西の集団をニシニホンアマガエルにしたらいいじゃないか!そうしたらわざわざ水族館の種名板を更新しなくてもいいじゃないか!」と思う方もいらっしゃるかもしれません。ところがそうもいかないんです。     新種を記載する際には、その生物のここがほかの生物と違うんですよ、という特徴を保証するためのタイプ標本というものを指定する必要があります。ニホンアマガエルという種類を記載する際に指定されていた標本の特徴は、南西の集団でよく見られる特徴と合致することがわかりました。 そのため、真のDryophytes japonicus ニホンアマガエルはおそらく南西の集団のことであり、北東の集団に新しく学名を付ける必要がある、ということになりました。 そのため、北東の集団にDryophytes leopardus ヒガシニホンアマガエルという名前が付けられたのです。このあたりの話はけっこう複雑ですので詳細は省きますが、気になる方はぜひご自分で調べてみてください。     「じゃあその特徴ってのはなんなんだ!」という方もいらっしゃると思うので、これからご紹介します。 どうやらヒガシニホンアマガエルは太ももの裏側にヒョウ柄模様が見られる場合が多いようです。当館で展示している個体を確認してみると… 確かに、白と黒のまだら模様がなんとなくヒョウ柄のように見えます。 ヒガシニホンアマガエルではこのヒョウ柄模様が見られる場合が多いため、ヒョウを意味するleopardus という種小名が付けられました。 ニホンアマガエルではあまりまだら模様にならず、一様な模様になることが多いようです。 ただ、この特徴だけで完璧に2種を区別することは難しく、中にはヒョウ柄模様のあるニホンアマガエルがみられる可能性があるそうなので、注意が必要です。 ぜひみなさんも、家の近所のアマガエルを見てみてください。めちゃくちゃヒョウみたいな模様してる!みたいな発見があるかもしれません。     今回のコラムはいかがでしたでしょうか。なんとなくニホンアマガエルがどうなったのか、理解していただけましたでしょうか。私はこのコラムを書いてみて、簡単に説明することの難しさを痛感しております。 ヒガシニホンアマガエルの記載論文は、調べたら誰でも読むことができます。気になる方は読んでみてください。このコラムでは記載論文のほんの一部しか紹介できておりません…。   それではまた次のコラムでお会いしましょう!

魚病闘病日記パート⑦(ファイヤースパイニィイールの寄生虫)
  • 治療

魚病闘病日記パート⑦(ファイヤースパイニィイールの寄生虫)

みなさん、こんにちは。 少しずつ暑くなってきました。気温の変化にご注意くださいね。   魚病闘病日記、久々の更新です。 約1年ぶり、ちなみに前回はプロトプテルス・ドロイの治療についてのお話でした。     さて、今回は水族館で飼育している魚から見つかった寄生虫についてのお話です。   さかのぼること、なんと5年前! 2020年に搬入したファイヤースパイニィイール5匹がなかなかエサを食べず、体調の悪い状態が続きました。     ↓ファイヤースパイニィイールはこちら 実は、メコンオオナマズがいる水槽で展示している魚でトゲウナギと呼ばれる魚の仲間です。     1匹のファイヤースパイニィイールが残念ながら死亡してしまい、死因を調べるために剖検(※1)を行いました。   腹腔内や腸管内に寄生虫がたくさん認められました。その他の臓器についても病理検査に出してみましたが、寄生虫感染以外に目立った病変はありませんでした。   ※1 剖検とは 生き物が死んだ原因などを検査するために、死亡した生き物を解剖すること。     (閲覧注意:魚の内臓の写真があります。) ↓剖検様子はこちら、黄色丸のところに赤色の寄生虫がいることがわかります   寄生虫が体調不良の原因ではないかと考え、駆虫剤の薬浴を開始しました。 しかし、残り4匹の状態は良くならず、エサも食べないままです。 さらに1匹の死亡が認められてしまいました。   その個体も剖検しましたが、1匹目と同様に、寄生虫の感染以外に病変が認められません。 薬浴では駆虫できないと思い、駆虫剤を経口で与えることにしました。   すると、数日後に1匹がエサを食べ始めました。また、2週間後にもう1匹食べ始め、投薬を始めて2ヶ月後には最後の1匹も摂餌を確認することができました。 なんとか、残った3匹は体調が回復し、順調に成長していきました。     しかし、ここで問題が1つ。 ファイヤースパイニィイールから完全に寄生虫を排除できたかはわかりません。 そのため、他の魚と同居させてしまうと飼育水を介して寄生虫が移ってしまう可能性があります。   そこで、寄生虫を調べるため、岐阜大学獣医寄生虫病学研究室の高島先生に寄生虫の同定を依頼しました。   高島先生に、今まで調べられて知られている寄生虫の形の特徴と比較して、どの種や属に属するのかを調べてもらうこととなりました。 さらに同研究室の齋藤先生も加わり、同定してもらった結果、カマラヌス属の線虫であることがわかりました。     残念ながらカマラヌス属の生活環(※2)はまだわかっておらず、ファイヤースパイニィイールは他の魚と同居することができませんでした。 展示水槽へのデビューは叶いませんでしたが、現在もバックヤードの水槽で飼育管理を行っています。   ※2 生活環とは 寄生虫の卵や幼虫が発育、変態して成虫となり、次の世代を生じるまでのサイクルのこと。寄生虫によっては、成熟するために他の生き物(中間宿主)に一度、寄生しないといけないものもいる。     また、今回見つかった寄生虫がカマラヌス属の特徴をもつことまでは判明しましたが、報告されている文献と比較しても形が全く同じものが見つからず、もしかして新種?!という状況になりました。   そこで、高島先生と齋藤先生は世界中からカマラヌス属に関する文献を取り寄せ、今回検出された寄生虫と比較されたそうです。 文献は膨大な量になっていましたが、資料をまとめた先生方は「この資料でカマラヌス属全て同定できるようになりました」と満足げな顔をされていました。   今回は、メスの寄生虫しか検出されなかったことより、新種であることを確定させることはできませんでしたが、寄生虫の形態とDNA情報だけではなく、寄生された魚の症状についてもまとめた貴重なデータを発表することができたとのことです。     これらの結果が、2025年3月に寄生虫の雑誌である『The Journal of Parasitology』に論文掲載されました。キレイな寄生虫の写真が載っていますのでぜひご覧ください。   https://bioone.org/journals/journal-of-parasitology/volume-111/issue-2/24-58/Molecular-Characterization-and-Morphological-Observation-of-Zeylanema-Nematodes-in-the/10.1645/24-58.short     水族館にやってくる生き物は、さまざまな場所からやってきます。 そのときに病気にかかっている可能性もあり、検疫することの大事さを痛感した事例でした。 今後も、水族館の生き物を健康に管理できるよう頑張っていきます!     ↓最後におまけ テーマ水槽『うなぎのぼりの恵方巻』でも活躍してくれました

そっくりないきもの展 見どころその2
  • 企画展・特別展示

そっくりないきもの展 見どころその2

みなさまこんにちは。 GW期間中はたいへん多くのお客様にご来館いただき、館内はもちろん企画展会場もとてもにぎわっていました。 連休中は忙しかったですが、企画展担当としては嬉しい気持ちで作業をしていました。     前回の飼育コラムでは企画展会場に入ってすぐの生き物を紹介しましたね。     今回は、出口に近いこちらのエリアの見どころをお話しします。   まずは大きな展示窓をのぞいてみましょう。中には江戸川区自然動物園さまからお借りしているアナホリフクロウがいます。   写真を撮ろうとしたタイミングで驚かしてしまったのか、いつもいる場所から下に降りてしまいました。   いつもはこんな感じです。   なにやら赤いにょきっとしたものの上にとまっていますね。これはアリ塚をイメージして作ったレイアウトなのですが、実際に南米で当館スタッフが見た光景から着想を得たものです。     アナホリフクロウは南北アメリカ大陸に広く分布している種ですが、野生の個体を実際に見たことが無いので、これはとても参考になりました。     擬態の企画展を計画しているときにどうしても展示したかった生き物のひとつがこのアナホリフクロウでした。わかりやすい擬態は葉っぱや石や危険ないきものなどに似ていることだと思いますが、アナホリフクロウの場合は「音」を使った擬態になります。   アナホリフクロウは危険を感じると、猛毒を持つガラガラヘビの威嚇音に似た鳴き声を出すことが知られています。今回はガラガラヘビとアナホリフクロウの出す音も聞くことができますので、見るだけでなく聞くそっくりもお楽しみください。     その他にも、においで擬態するこんな生き物たちも展示しています。     そっくりないきもの展では関連イベントとして、6月15日に様々な生き物の声を真似る「動物ものまね芸」でおなじみの五代目江戸家猫八さんに来ていただけることになりました。 こちらも企画展担当としてぜひ実現したかったものになります。 子供のころにテレビで見て面白いなぁ~と思った動物の鳴きまねをする落語家さん。いまでは五代目へとその技術が引き継がれています。   事前予約にはなりますが、子供たちに楽しんでもらいたいと思い、保護者と一緒に参加の中学生以下は参加費を無料にしています。 参加者には千社札のプレゼントと、あわせて手ぬぐい・サインの抽選会も開催します! みなさまのご参加をお待ちしています。   <詳しくはこちら>江戸家猫八講演会『本物そっくり?!なきまねライブ・みんなも一緒に鳴いてみよう』

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本日の開館時間

9:30-18:00

最終入館 17:00

世界淡水魚園水族館 アクア・トト ぎふ

〒501-6021 岐阜県各務原市川島笠田町1453

TEL 0586-89-8200 FAX 0586-89-8201

2回分の料金で何度でも楽しめる!

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