みなさま、こんにちは。獣医の小野です。 夏が終わり、もうすぐ紅葉の季節がやってきますね。 2年前のある日、飼育スタッフTさんに 飼育しているホクリクサンショウウオの中に、目が白い個体が複数いるとの相談を受けました。 実際に確認すると、目の表面である角膜という部分が白く濁っていることがわかりました。 ↓こんな感じ 目が白いといっても、様々な原因が考えられます。 白内障?細菌が感染している?寄生虫が感染している?ガンによるもの?…などなど。 目の検査を行い、調べていくと、『脂肪性角膜症』という病気であることがわかりました。 『脂肪性角膜症』とは、特に樹上種のカエルで認められる病気であり、目の角膜に脂質が沈着する病気です。 栄養過多や、繁殖に向けて貯めた脂肪を上手に消費できなかったために発症するのではないかと言われています。 長期間にわたって白くなっているということで、エサとして与えているコオロギが原因かもしれない!と思い、 まずは、コオロギに与えているエサを見直すことにしました。 何故かというと、コオロギはエサによって栄養価が変化すると言われているからです。 つまり、脂質が多く含まれているものを食べているコオロギは脂質が多くなるというわけです。 そこでまず、低脂質食で育てたコオロギを与えた個体と、これまで通りの育て方をしたコオロギを与えた個体で、角膜脂質症の経過を観察してみました。 しかし、大きな差は認められず。どうやら、コオロギに与えているエサを変更しても、病気は良くなりそうにありません。 そこで!脂質代謝に関係しているビタミンEをホクリクサンショウウオに与えてみることにしました。 すると、徐々に目の白く濁ったところが小さくなっていきます!! 予想通り、ビタミンEを与えることは治療法の1つになりそうなので ビタミンEを与えた個体と与えていない個体で比較実験を行い、本格的に治療効果について検証してみることにしました。 実験期間は2年に及びましたが、ビタミンEの治療効果を証明することができ、 この成果を先月につくばで開催された日本野生動物医学会にて、発表してきました。 発表内容について、ほかの動物園水族館の獣医師からたくさんの質問をもらいました。 これまで行われてきた治療法は、給餌制限(餌を減らすこと)だったため、病気は良くなるものの痩せてしまうことが多かったようです。 しかし、今回発表した治療法は痩せるという問題も解決でき、とても興味深い発表だったと言ってもらうことができました! ただ、今回はホクリクサンショウウオのみで実験を行ったため、ほかの生き物については症状が良くなるか、まだわかりません。 今後、ほかの生き物で脂肪性角膜症が確認されたらビタミンEの効果を検証したいと思います! Tweet