現在、当館ではゲンゴロウ、コオイムシ、タガメ、タイコウチの4種の水生昆虫を展示飼育しています。 今年も繁殖期をむかえ、5月1日にゲンゴロウが、5月5日にコオイムシ、6月7日にタガメ、6月8日にタイコウチがそれぞれ産卵しました。 今回は、その中でもカメムシ目に分類されるコオイムシ、タガメ、タイコウチの繁殖に注目してみたいと思います。 まずはコオイムシ(子負虫)ですが、名前が示すように、コオイムシのメスが、オスの背中に卵を産みつけます。 写真のように卵は長径2mm、短径1.3mmほどの楕円形で、これを背負い、保護するのはオスの役割です。オスが積極的にアピールし、1匹のオスに複数のメスが卵を産みつけるのが一般的です。 オスは卵を背負うと酸素を供給するため、水面から卵が出るようにしてじっとしていることが多いようです。 卵は成長に伴い水分を吸収しながら大きくなります。1~2週間ほどで最初の1.5倍くらいの大きさになると、幼虫がふ化します。 次にタガメですが、写真のように水面から出た木の杭や水草の茎などに卵を産みつけます。 受精した卵は白地に黒い縞が入った長径5mm、短径2.5mmほどの大きなもので、1回の産卵でおよそ80~90個が産みつけられます。 タガメのオスはふ化するまで、この卵の世話をします。直射日光が当たるときは自分の体で卵の上に覆いかぶさって日陰にしたり、定期的に口に含んだ水分を卵に補給して乾燥するのを防ぎます。また、外敵が襲ってきたときは、威嚇して追い払うこともあります。 1~2週間で卵が1.5倍くらいの大きさになると幼虫のふ化が始まります。ふ化はほぼ同時で一斉にたくさんの幼虫が産まれてきます。しばらくはオスが幼虫を外敵から守ります。 最後にタイコウチの卵は湿った土やコケの中に産みつけられます。 当館では生け花などで使う吸水スポンジを産卵床として使っています。 長径3.7mm、短径1.5mmほどの楕円形の卵に呼吸糸というひげのようなものが生えています。この呼吸糸は卵に酸素を送ることができ、卵が水没しても呼吸糸を通して呼吸することができます。 下の写真では呼吸糸だけが出ていて、卵はスポンジ内に埋め込まれています。 1回の産卵で10~12個ほど産卵します。 ふ化直前になると卵の中の幼虫が透けてきて、卵自体が赤っぽくなります。 このように産卵場所や子育てに違いがあるというのは、面白いですよね。 Tweet ;